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安寿子の靴 その6

2010年12月20日 00:38

安寿子の靴_0001


唐十郎の文章に触れるのはこの作品集が初めてだったのですが、この人、天才ですね(単なるエキセントリックなおじさんだとばかり思ってました・・・)。

唐十郎は1940(昭和15)年、東京生まれ。明治大学文学部演劇学科を卒業し、1963(昭和38)年に劇団「状況劇場」を結成。演劇活動にとどまらず、1983(昭和59)年には『佐川君からの手紙』で第88回芥川賞を受賞しています。


『安寿子の靴』には表題作を含め、全8編の小説が収録されていて、その他の舞台はどれも京都ではないのですが、少し紹介を・・・。

「伸子の帰る家」(『文學界』昭和58年3月号)   タクシーにただ乗りして捕まった“刑務所志願”の女。小さな新聞記事に載っただけのこの女に、興味を持った男。彼が女を乗せたタクシー運転手から事件の顛末をスナックで聞きだすというだけの奇妙な作品。

「愛咬」(『小説宝石』昭和58年10月号)   自殺志願者のモデル。このワガママな女は躁鬱に悩まされたある夜、当てずっぽうに電話をかけ、見知らぬ相手に「今、自分は死ぬところだ」と伝える。そして、嘘を重ねた末、何故かその電話相手が飼っていた文鳥の死骸を葬る羽目に・・・。そんな自由奔放で憎めないモデルの話を、友人の男が下北沢の踏切近いスナックで聞いているという話。

「スッポンポン」(『小説現代』昭和58年6月号)   熱海の温泉街にある中華そば屋の二階の窓を感慨深げに眺める男。男は8年前の3日間だけその部屋にいて、駆け落ち同然の女の帰りを待っていた。結局、女は戻ってこず、今では中華そば屋もつぶれていた。しかしその二階の窓から赤いカーテンがはためいているのが気に掛かる。女を待ったかつての部屋がストリップ部屋になっていて、ベテランの踊り子に軽くあしらわれながら、待った女の面影を想う男の物語。

「感傷鬼」(『文學界』昭和58年12月号)   かつて住んでいた長屋の裏露地にやってきた男。目的は20年前、土中に埋めた日記を掘り起こすためだった。その日記の中には一週間で三人の女性に書こうとした恋文の下書きが含まれていた。一人目は町内の角に住む印刷工場の娘、二人目は長屋にいる双子の娘の上の方、三人目は神社の下のバラックに住みついた目のきつい長女。しかし日記は既になく、誰かに拾われ捨てられでもしたのだろうと立ち去る男。そこに偶然通りかかったのが、かつての顔なじみの酒屋の御用聞き。なんと、日記はその御用聞きに拾われていて、大切に保管されていたのだった。男の代わりに三人の女性を見守ってきた御用聞きの口から明かされる、三人の女性の現在とは・・・。

他に、「水陸両用の女」(『オール讀物』昭和59年8月号)、「片腕」(『文學界』昭和58年6月号)、「便利屋」(『小説現代』昭和59年9月)。


奇しくも、芥川賞を受賞した前後に発表された小説群ですが、発想がどれも奇抜でおもしろいのです。
惜しむらくは、この装幀。唐十郎や寺山修司に関わる美術舞台を手掛けていた合田佐和子氏の装画も含めて、あまりに地味すぎます・・・。





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