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一条戻橋 その2

2010年12月15日 00:17

「戻橋」という名前の由来は・・・、延喜18(918)年12月、当代きっての文章博士・三善清行が亡くなり、父の死を聞いた僧の浄蔵が熊野葛城から急いで京都に帰ってくると、葬列は丁度、この橋の上を通っていました。浄蔵が棺にすがって嘆き悲しみ、神仏に祈願したところ、父・清行が一時的に生き返り、父子は抱き合ったという言い伝えがあるからなのです。

もともと、この橋は辻占の一種である“橋占(はしうら)”の名所でもありました。
橋占とは、橋のほとりに立って、そこに行き交う人びとの会話や言葉から吉凶を占うというもの。
陰陽道の土御門家の祖である安倍晴明(延喜21(921)年―寛弘2(1005)年)は、橋占に十二天将を式神として使い占っていたそうです。はじめは家の中に式神を置いていたものの、妻がこれを怖がったので、晴明は式神を戻橋の下に隠し置いて、必要なときに召喚していました。
また、晴明の父・保名が殺害されたのも、ここ戻橋で、晴明が呪法を駆使して保名を蘇生させた場所でもあるのだとか。

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〈『泣不動縁起絵巻』清浄華院蔵 重要文化財 16世紀 安倍晴明が二匹の式神(写真右下)を従えて祈祷する場面〉

『源平盛衰記』にも、建礼門院(久寿2(1155)年―建保元(1214)年。高倉天皇の中宮で父は平清盛)が安徳天皇を出産のときに、その母・二位殿(平時子)が一条戻橋で橋占を行ったことが描かれています。後になってわかるのが、安徳天皇が8歳にして壇ノ浦の海に沈むことを暗示していた・・・という哀しい結末なのです。

しかし、なんと言っても、戻橋にまつわるもっとも有名な伝説は渡辺綱の鬼女(橋姫)退治でしょう。『平家物語』剣巻には詳しく描かれています。

嵯峨天皇の(809年―825年)の頃。深い妬みにとらわれた公卿の娘が、恨んだ女を殺したい一心で貴船大明神に祈り、ついに生きながら鬼となった。俗に言う「宇治の橋姫」である。
橋姫は、妬んでいた女を殺すだけでは飽きたらず、相手の男やその親戚、さらには誰彼見さかいもつかずに人を殺すようになり、洛中の人びとは申の時(15~17時)を過ぎると外出することを控えるようになってしまった。

源頼光の四天王のひとり、渡辺綱(天暦7(953)年― 万寿2(1025)年)が頼光の使者として一条大宮に遣わされた。夜は危険と、名刀「鬚切(ひげきり)」を預かり、馬で向かった。

その帰り道、一条堀川の戻橋を渡る時、二十歳ほどの女性を見つけた。肌は雪のように白く、紅梅の打着で、お経を持って、ひとり南へ向かって歩いていた。

綱は「夜は危ないので、五条まで送りましょう」と言って、自分は馬から降りて女を乗せて、堀川を南に向かった。正親町の近くで女が「私の住所は都の郊外なのです。そこまで送っていただけませんか」と頼んだので、綱は「分かりました。お送りします」と答えた。すると女は鬼の姿へと変わり、「私が行くのは愛宕山だ」と言って綱の髪をつかむと、乾(北西)の方向へと飛び立った。

綱はあわてず、鬚切を抜き、鬼の腕を断ち斬った。綱は北野の社の回廊に落ち、鬼は手を斬られたまま愛宕山へ飛んでいった。綱が髪をつかんでいた鬼の腕を手に取って見ると、雪のように白かったはずが真っ黒になっていて、銀の針を立てたように白い毛がびっしりと生えていた。

鬼の腕を持ち帰り頼光に見せると、頼光はたいそう驚き、安倍晴明を呼び、彼にどうすればいいのかを訊ねた。すると晴明は「綱は七日間休暇を取り、謹慎させてください。鬼の腕は私が仁王経を読んで封印します」と言い、その通りにさせた。

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〈歌川国芳『本朝武者鏡 渡辺綱』 大判錦絵 安政2(1855)年〉

このあと、鬼女の腕は、摂津国渡辺(大阪市中央区)にある渡辺綱の屋敷に置かれていましたが、綱の義母に化けた鬼が取り戻したとされています。

ちなみに、この鬼女の腕を切った源氏の名刀「鬚切」は実在します(笑)。この事件の後、「鬼切(おにきり)」と呼ばれるようになったこの刀は、羅生門の鬼退治(『酒呑童子』)などにも使われ、現在は北野天満宮の宝物殿に所蔵されているのです。


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なお、「戻橋」という名から、婚礼の輿入れや葬送の列は、今もこの橋の上を通りません。逆に、旅に出る人や物を人に貸す時は、この橋を渡る風習があったようです。近年でも太平洋戦争で戦地に赴く人やその家族は、無事戻ってくるようにとの願掛けで、戻橋を渡りに来ていたのだとか・・・。





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