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堀川東入ル その2

2010年11月18日 00:21

さて、『堀川東入ル 澤野久雄自選短篇集』の所収作品は――

堀川で家業の京染めを営む紀和。若い女性の感性で、事業は手を広げ順調だった。その一方で、婚期を逃しつつある彼女には、密かに付き合う妻子ある大学教授がいた。仕事と不貞の恋との間で揺れる戦後の新しい時代の女心を描く   「夜の河」

清水焼の陶工の家に生まれた千穂。清水焼が滅びつつあることを感じた彼女は、養子・修二との結婚を拒み、フャッション・モデルの華やかな世界に飛び込んだ。陶器祭の日、偶然、ピアニストの西堂と会い、彼に心惹かれる。西堂と結ばれた翌朝、茶の間にあった新しい鉢を目にし、修二の才能を認める。が、もう遅い。父親の「滅んだものは、なつかしいものだ。」という清水焼を評した言葉の呪縛から逃れられないまま、モデルの世界で生きていくことを決意する   「五條坂」

40年間、五條坂で窯焚きの仕事に従事してきた五平。陶磁器店の主人・源一が倒れ、余命幾ばくもないと聞かされる。源一の妻・千加と五平は40年前、一緒に田舎から出てきた仲であった。二人の昔の関係を知っている五平の妻も今では千加とは姉妹のように仲がいい・・・。世評に上る陶器や陶工の陰で、全く人目に触れられない窯焚き職人。その人生を垣間見せる   「晩年の石」。

他に、「雙面」、「正倉院の藍」、「花と雪」、「回転木馬」、「遠い音」の8編。

棗は、友達の部屋の、洋風の卓子の上に置かれていた。未樹はゆつくりと、手を伸ばそうとした。と、不意に桜の花びらが一枚、身をもみながら窓から降つて来て、棗に触れようとして触れられずに、卓の上へ落ちていた。しかしそのはなびらの身のこなしは、一瞬、未樹の手を遮ろうとしたかのようだつた。   「花と雪」より
20歳の頃の未樹が、友人の家で、慕っていた職人・佐伯がつくった“棗”を見つけたシーン。漆工の娘・未樹と佐伯は恋仲だったが、師匠である未樹の父親に関係がばれて叱責を受けた末、佐伯は一年前に姿を消していたのです。

じつと相手の目を見ると、その目の中で影がゆれている。泣くのかと、憲吉は胸をさわがせた。そこへいきなり、硝子窓を打つて来た時雨だった。あるいは降り出したばかりの雨が、すでにれん子の目に映つていたのかもしれない。雨の流れる硝子を通して、町はさむざむと濡れている。   「遠い音」より
四條の呉服屋「大吉」の娘・れん子が、今は小料理屋の女将となり、その娘が今度、舞妓に出ることとなった。かつて、れん子に憧れていた下駄職人の憲吉が、れん子の長い月日の苦労を慮っている場面です。


まあ、文章の良し悪しの主観は、あくまで好みの問題ですが、いい小説ばかりです。


この『堀川東入ル 澤野久雄自選短篇集』を出版したのは、エポナ出版。収められた物語と同じように、地味ながらも装丁と組版が、とてもいい仕事をしているのです。しかし、この出版社もすでにないようですね。

20101117012300d4a[1]
〈「雙面」の舞台となった寺町御池。中年で独身の奇妙な姉弟が営む人形づくりの家があり、そこに弟子入りした若い女性の苦悩を描いています〉






コメント

  1. 4288 | URL | .0I7MpDg

    エポナ出版

    消え去るものは仕方がないですかね。
    残念です。
    ポチ

  2. miyakotenjin | URL | -

    ご訪問ありがとうございました!

    4288さん、コメントありがとうございました。

    ポチッのお返し、しておきました。

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