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夜の河 その2

2010年10月29日 23:34

原作は澤野久雄の同名小説「夜の河」(1952年)。
この小説で3度目の芥川賞候補となるも落選。しかし、映画のヒットで「夜の河」が澤野の代表作となりました。

監督・吉村公三郎にとってはこれが初のカラー作品。高峰三枝子、京マチ子、原節子、若尾文子・・・主演女優の魅力を引き出す力に長けた監督ですが、案の定、山本富士子も「夜の河」を契機に、日本を代表する女優となりました。
そして撮影は宮川一夫。宮川は、「羅生門」「雨月物語」「祇園囃子」「用心棒」「悪名」など錚々たる作品に携わった日本映画界第一のカメラマンですが、サントリートリスの名作CM「雨と子犬」(1981年)でも有名ですね。

さて、本作品は1956年度キネマ旬報ベストテン第2位。
“総天然色”なんて言葉がしっくりくる優しい色彩で、むしろ今の時代に観ると懐かしくも新鮮ですっ。

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主役の“きわ”は30歳前の仕事に生きる美しい女性。
演じる山本富士子の実年齢は24歳くらいでしょうか? とにかく演技の貫禄が20代半ばの女優とは思えないのです。
商売での、時に自信に満ちあふれたやりとりや、乾いた物言いは凄腕の自立した商売人にしか見えず、それでいて、しなやかな京都弁と和服の着こなし・・・完璧です(商売での強気は、むしろ自分の仕事に対するプライドの表れで、貪欲というのではないのです)。

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そして、竹村を恋い慕う艶やかな眼差し、親友に見せる弱い女心・・・、主人公はひとりで生きる強い女性のようでいて、それとともに感受性豊かで他人を思いやる優しさをもつ人なのです。だからこそ、妻の死を待っているような竹村の物言いが許せなかったのですね・・・。

きわの父も継母も妹も、竹村の妻の死が、きわと竹村の結婚を前進させると思っていたのですから、決して竹村だけを責めるのは酷というものです。
むしろ、生きることに誠実すぎる“きわ”の融通の利かない性格が、少し不憫に思えてしまいます(もちろんそこが最大の魅力)。



まあ、山本富士子絶賛のこの作品ですが、一方で、相手役の上原謙の大根役者ぶりにはびっくりしました(笑)。
劇中のこととはいえ、どうしてこんな腑抜けみたいな中年の大学教授に、仕事のできる“きわ”が惚れてしまうのか? と疑うほどに下手なのでした・・・。

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また、“きわ”の妹・美代役の小野道子(本名:長谷川季子)は、大スター・長谷川一夫の娘。姉とは対照的な性格のおちゃっぴいな演技で“幸福”な新婚の妻を演じ、なかなかよかったです。

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〈左が小野道子。野村浩将監督の「祇園の姉妹」(1956年)で主演しています〉



「夜の河」という題名は、小説で、竹村の妻の告別式の帰りに堀川姉小路の店まで夜道を歩く主人公が、竹村との別れを決意し、耳にした堀川の水音から。
当時はこの川に染料に染まった様々な色の水が流れ込んでいたのです。
「昼見れば、赤も黄も、朱も青も、みんな一つに溶け合い、紐のように絡み合つて流れてゆく。そしてどこまでか下つたら、その色は一つも残らず消えてしまつているにちがいないのだ。(中略)やがて何時間かすると、紀和の流す染料も、また音を立ててここへ落ち込むだろう。そしてそれもすぐ他の水と混り合い、溶け合つてしまうだろう。」(「夜の河」本文より)

当時の堀川はなみなみと水を湛え、川東の小路には玩具のような市電が走っていたのです。

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50年前の京都は甍が整然と並ぶ、美しい町なのでした。

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コメント

  1. うさぎ2 | URL | TaFzkmpY

    夜の河=小野道子様へ!!

    [夜の河]の評価を拝読!!
    小野道子の芸名は、短い期間でしたですね!!その後…長谷川季子様に、
    演技力は、タカラズカ時代に、鍛えられ、お父様の名優長谷川一夫丈の血をひき、頑張って居られましたが、若くして、リュウマチを患われ、奇跡的に完治されましたが、正座が、どうしても長時間出来ず、お仕事の依頼が来ても、お断りされて居られるとか、お聞き致しました。演技力は確かで、素晴らしく若手の時代劇の約束事、知らない俳優(女優)の指導お願い致したいですね!!

  2. miyakotenjin | URL | -

    うさぎ2さん、コメントありがとうございます。

    およ、コメントが!
    うさぎ2さん、ご訪問どうもありがと~ございます。
    それにしても、この頃の映画は、宝塚出身の女優さんで支えられていましたね。
    演技力は、今の女優さんと比べるのは酷な話かも・・・です(笑)。

    長谷川季子(小野道子)さんは、リュウマチだったのですか・・・。
    それほど詳しくは知らなかったのですが、生き生きとした女優さんだなと思ったのですが、 「夜の河」を観た後に、長谷川一夫の娘だと知りました。

    うさぎ2さん、また、いろいろ教えてくださいませ~。

  3. うさぎ2 | URL | TaFzkmpY

    返信!有難う(^^♪

    早々のご返信、有難う御座います。
    70代で独学で覚束ない手探りでのパソコンしてます。
    返信して下さり大変に嬉しく有難う御座います。私ごとですが、
    名優長谷川一夫丈のフアン歴62年目に突入!!パソコン始めたのも、一夫丈の投稿や掲載を拝読致したく、始めたのがきっかけ、老化防止にも役立ち健康そのもので有り難く今では、パソコン無くては生きていけないくらい、ハマってます。(^^♪

  4. miyakotenjin | URL | -

    おおっ、62年目とは、すごいっ!

    うさぎ2さんの熱意に、感服!
    長谷川一夫への情熱と、パソコンをこなしてしまう熱意の両方にです!!
    (敬愛なさっている「長谷川一夫」を呼び捨てで失礼・・・私にとっては歴史上の人物のような存在ですので・・・)
    亡くなった今も、うさぎ2さんのような温かいファンがいらっしゃるとは、役者冥利に尽きますね(笑)。

    現在のような泡沫のテレビ時代には、現れるべくもない名優ですが、
    再評価し続けなければ、忘れ去られかねない今の時代・・・残念ですねえ。

  5. うさぎ2 | URL | TaFzkmpY

    嬉しいです(^^♪

    4.miyakotenjin | 様
    心躍る、嬉しい言葉の返信に又々嬉しく感激致し拝読、お礼申し上げます。
    名優長谷川一夫丈の生前からのファンが今だ健在です。祥月命日の4月6日や月参りの6日にはファンの都合つく人が交代で東京谷中に墓参いたし…墓参の帰りは、お集いをして皆でビデオでの映画鑑賞したりと当時を偲ぶ会を致してます。2008年に生誕百年を迎え、テレビの時代劇専門チャンネルにて、2年近くにわたり、一夫丈の映画を放映して下さり新たなファンも増えた様で嬉しい事です。もっともっと沢山ファン増える事、願ってます。一夫丈とは親子の年齢差ですが優しく、お話して下さいました。礼節、誠実を守り謙虚に忍耐強く威張る事なく、芸一筋に生涯、二枚目の役を貫き通されました。この様な役者様のファンで有る事を誇りに致して居ります。私ごとの話になって仕舞いました事、お詫び致します。
    安曇野は今朝、2千メートル以上の山々が一段と真っ白に成り空は雲なく青く美しかったす。



  6. miyakotenjin | URL | -

    こちらこそ、返信ありがとうございます。

    ああ、なるほど、最近は時代劇の専門チャンネルもあったのですよね。
    そう考えれば、いい時代になりました(笑)。若いファンも増えますよ!
    いつまでも憧れを抱ける人がいらっしゃるというのは、羨ましいかぎりです。

    うさぎ2さんは安曇野にお住まいなのでしょうか。
    北アルプスの湧き水、澄んだ空気、うらやましい!! 
    でも、寒さが苦手な私には、これからの季節はちょっとつらいかなあ・・・(笑)。

  7. うさぎ2 | URL | TaFzkmpY

    miyakotenjin 様
    最近の信州…安曇野は雪も少ししか降らず昭和の時代より暖かく水道管も凍ら無く成り凌ぎやすいですよ(^O^)/4日~安曇野(娘の嫁ぎ先)を出発し中央線にて八王子で乗り換え横浜線にて東海道線の戸塚の友人宅へ(同じファン同士)平塚のホテル(¥3300円=通常1万円)泊まり翌朝4時起き5:31分発でオール在来線にて、8回乗り換え、大阪の息子の家に…1か月ごと行ったり来たりして暮らしています。冠婚葬祭以外は、新幹線や特急は乗らない事に致してます。大阪に帰宅してから、何かと用事ありで、今日やっとパソコンゆっくり出来る時間取れました。私ごとのおしゃべり、お許し下さい。

  8. miyakotenjin | URL | -

    うさぎ2さん、こんにちは~。

    どこも雪が少なくなっちゃっいましたねえ・・・、昭和も遠くなりにけり・・・でしょうか(泣)。

    そういえば昔、新潟の長岡では雪が降ると、「万札が降ってきた!」と土建業者が勇んで雪掻き仕事に従事していた、という話を地元の人に聞きいたことがあります(田中角栄全盛の時代の話です)。まったくの余談でしたね(笑)。

    いやあそれにしても、息子さんと娘さんのお宅を、行き来なさる生活、それもまたうらやましい~(うさぎ2さんにとっては大変なのかも・・・ですが)。
    ただ、在来線でのご移動というのはすごいですねっ!
    旅情なんて言葉がなくなっちゃった昨今、いちばん贅沢な移動手段ですよ(笑)。

  9. うさぎ2 | URL | -

    想い出(*^_^*)

     miyakotenjin様
    ご丁寧なる返信に投稿致したくなり、ご迷惑かなーと!!思いつつ…の返信お許し下さいませ。又、私ごとの話題に成りますが、娘の婿さんは営業マンで転勤族…新潟地震が有った時は家族全員が新潟県長岡市の駅~徒歩10分程に住んでおりました時で丁度私は大阪に来ていて地震の怖さはマヌガレましたが娘の家族は大変な経験を致しました。長岡市は故田中角栄さんのお力か長岡駅周辺は雪が降りだすとセンサーがキャッチし主要道路の真ん中から噴水の様に地下水が出てアットゆうまにとけて自動車はスイスイ渋滞は起きなかったです。各家の玄関先もセンサーでの雪解け工事がなされていて雪かきせず!転勤での初めての年は何十年振りかの大雪だった(一晩で1メーター以上)降りましたが、おかげと鉄筋の頑丈な造りの家を会社のお陰で借りた為、この年は屋上に2メーター積っていても雪かきする事無く地震にも、びくともせず助かりました。そんな長岡えも9回程、乗り換て16時間かけて大阪~長岡えと在来線で5年間(60代の頃)…通いました。今では…楽しい思い出イッパイです。

  10. miyakotenjin | URL | -

    いつでも、お気兼ねなく来てくださいね!

    迷惑なんてとんでもないです(笑)。

    それにしても、娘さんご家族があの地震に遭われたとは大変・・・、ご無事で何よりでした。
    私も被害のひどかった小千谷や長岡に行ったことがありましたので、当時は心配しました。

    自分が長岡に行ったのは地震の数年前。そうそう、地面から水が噴き出すのでしたねっ(笑)、思い出しました。
    ただ、道路が一年中、水錆のせいで赤茶けていたのが、少し残念(泣)。

  11. ラピス・ラズリ | URL | -

    山本富士子の美しさ

    はじめまして
    映画『夜の河』のファンで、ラピス・ラズリと申します。
    たまたま検索していてこちらに辿り着きました。
    アップされてから時間が立ち過ぎていて申し訳ないのですが、『夜の河』をこんなに
    詳しく取り上げているブログに初めて出会って、嬉しかったので、コメントさせていただきます。

    この映画の山本富士子、miyakotenjinさんが書かれている通り、美しさがハンパないですね。神々しい感じすらします。

    映画の解説を読むと、この映画以前の山本富士子は、ミス日本出身ということで
    美しさは折り紙つきだったが、お人形的な美しさで、女優としての演技力は、?の
    状態だった。でもこの『夜の河』で、内面的な女の情念を表現して、一皮むけた
    ということだそうです。

    監督の吉村公三郎は、京都に熟知しているから、その風景や京都弁、京都人の人物
    描写も嘘っぽくなく、「観光京都」ではない京都が描かれていて、そういうところも
    好きな映画です。

    特に、↑でも画像をアップされているシーンですが・・・
    主人公きわが、幼馴染のせつ子とどこかの屋上から京都の街並みを眺めて、「自分たちの母校が見えるわ」みたいなことを言うシーン。
    この学校が、たぶん今の鴨沂高校で、山本富士子の実際の母校でもあり、現実とオーバーラップして面白いなアと思った記憶があります。

    そういうことも含めて、山本富士子の魅力が最大限に引き出されている映画だと思います。また、衣装デザインは誰か知らないのですが、大胆な柄の着物を着ていて(上原
    謙が、ショウジョウバエの研究をしているということで、その柄とか)
    そんな着物も、山本富士子によく似合っていました。

    そんなわけで私が京都の懐かしい風景に出会いたいときに、見る映画です。

    このブログに辿り着いたのは、最近作家の高樹のぶ子氏が、マルセル盗難の本を出すということで、その事件を検索していて見つけました。
    偶然ですが、映画『夜の河』の原作を書いた澤野久雄は、マルセル事件について小説を書いているのですね。
    両方とも未読ですが、読んでみたくなってきました。

    このブログの京都の取り上げ方が、他とは、一味もふた味も違っていて、とても興味を
    そそられます。これから、少しずつ読ませていただきたいと思っています。

  12. t.okuno | URL | -

    ラピス・ラズリさん、いらっしゃいませ。

    『夜の河』にかぎらず、吉村公三郎監督の描く京都は飾り気がないですね。
    原作といい、山本富士子の存在感といい、ホントいい映画です。

    ちなみにマルセル盗難事件を題材にした澤野久雄の小説は、大して面白くはないです(苦笑)。この人の作品では、京都を題材にした短編がオススメでしょうか。

    とはいえ、澤野久雄の著作もほぼ絶版で、山本富士子ももうテレビ画面には現れず、今では吉村公三郎の監督作品のほんの一部がDVDになっているくらいで・・・寂しいものですね。

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