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花夜叉殺し その2

2010年10月25日 00:53

あらすじの後半。


曄江の汗や体液にまみれた篠治の肉体をむさぼる一花。
しかし篠治は一花が曄江を求めていることを見抜いた上で、知らないふりをし、さんざん楽しんでいたのだった。
「親父の恨みや、お袋の恨みを、筋ちがいのあの婆やで晴らしている女やねんで。どこがええのや。けったいな女やないか」と、こともなげにいう篠治。
そんな女にどうして手を出したのかと、一花は初めて篠治に楯突く。と同時に、忘れかけていた見えない刃物をつかむ。
「当たり前やないか。あの庭、知るためや。芳吉を殺した……あの庭、知るためや」篠治はさらに続ける。
「芳吉は何を考えた? 女と庭や。その庭が……わからへん。女に当たるより手ェないやないか。その女が何をした? 庭師と出来たんや。庭師がなにをした? 女に惚れた。三年掛かりで惚れ抜いて、あの庭を作ったんや。わからなんだら、やってみるより仕方ないやろ」
一見無造作な香花木で埋め尽くされた庭は、実は庭師の緻密な匂いの造作がしてあったのだ。「匂いの音楽を聴かせてんのや。その音楽も、ほかの音楽やない。そうや。淫らな音楽や。長いこと聴いてたら、けものになる音楽や……」
四阿(あずまや)を中心に、立ち入る人をけだものにする麻薬の庭。
「女があっても、それだけやったら、ただの悩ましい匂いの庭や……。女が狂い始めんことには、あの庭は〈姿〉を現わさへん……狂い出して、初めて音楽が聴こえてくるのや。庭が、完成するのや。狂わせてみんことには……それはわからへんやないか」
そんな篠治の言葉を聞いた一花は「むごいひとや! あんたはんは、鬼や! 悪や! 夜叉やっ!」と部屋を走り出る。

〈この小説を要約することには無理があります・・・、というよりあまり要約に意味はないですね。それと同じく、物語の進行に必然性を深く考えてもダメです。ただ単純にこの妖しい世界観を受け入れられれば、どっぷりはまっちゃうのです〉

その日以後も、一花の生活も篠治の生活も変わることはなかった。
「ほれ、とっておいてやったんやで。まだ洗うていてへんで」
その体に狂ったようにむしゃぶりつき愛撫する一花。泣きながら、一花は『曄江』にとびつく。

〈あほか・・・と呆れないでください。きちんと大団円が待っていますから。しかし恋情が募り募れば、あたかも人はもう性なんて超越してしまうんじゃないかと勘違いしてしまいそうな展開で危ういです・・・〉

ある日、いつものように忍び込んだ郷田邸の庭先で、一花は篠治と曄江の会話を聞く。
篠治が一部始終を曄江に打ち明けているようだった。
「……そうなの……お妾さんの子供なの……」「……やっぱり血ィか」「……好きな血なのよ」
(お母ちゃん!)と叫び、一花は藪を蹴って躍り出た。

数時間後、一花は銀閣寺の庭にいた。遠くにはほのかに赤い闇。その赤い空の下には火を噴いている庭があった。
焼け跡からは二人の焼死体と、勢の姉にあたる妾の白骨が発見された。


あらすじ終わり。今回も長すぎました・・・。


あまりに映像的で、読む者をも蠱惑にさせるこの作品。間違いなく赤江作品の中ではナンバーワンです!


初出は「別冊小説現代」1972年爽秋号。
現在は『赤江瀑短編傑作選〈幻想編〉 花夜叉殺し』(光文社文庫)で読むことができます。





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