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花夜叉殺し その1

2010年10月25日 00:47

花夜叉殺し 赤江瀑 1972年

花夜叉殺し
〈『赤江瀑短編傑作選〈幻想編〉 花夜叉殺し』(光文社文庫)所収〉


とにかく凄い作品ですョ。

この「花夜叉殺し」を読むたびに思うのは、
この人は作家になる最初の入り口を間違えてしまったんじゃないか、ということです。
「純文学」(純文学がエライといってるんじゃないですよ)という分野から入って、寡作のままで作家活動を続けていれば、おそらく今では耽美作家の大御所として澁澤龍彦や中井英夫クラスの位置を占めていたでしょうに、と(作風は全然違いますが)。
もちろん耽美主義って何だと聞かれてもよくわかりませんが、この作品が耽美だと人から言われれば、「ああ、なるほど」と納得してしまいます。そんな作品なのです。


邸宅に住む妾と無理心中を試み、ひとり亡くなった庭師。彼が執念を込めてつくった庭にはある仕掛けが施されていた。
庭園造りの要諦を全く無視し、様々な匂いの草木で埋め尽くされたその庭は、四阿(あずまや)を中心に匂いの奏でる音楽で、立ち入る者を淫らな“けもの”にかえる麻薬の庭だったのだ。
そして、彼の死から50年後。新たに庭の造作を頼まれた庭師・篠治が、仕組まれた庭の秘密を知ろうと、
あたかも50年前に死んだ庭師と同じように、邸宅に住む女と庭に潜む魔性の呪縛に堕ち、痴情に入り浸ってゆく。
そのふたりの逢い引きを夜な夜な庭先から眺めているのは、妾の子として義兄の庭仕事を手伝う青年・一花。
匂い立つ淫靡な庭に魅せられた3人に待っているのは、もちろん・・・破滅デス。



あらすじの前半。


庭師の妾の子として生まれた「一花(いっか)」。色街の女のような名前を他人にからかわれると、我を忘れて殺気立ってしまう。
その怒りは、“目に見えない”刃物となってあらわれ、怒りの末に相手を刺すのだ。
その血が滴る“血刀”を、今は亡き母親が好きだった銀閣寺の『月の庭』に深夜忍び込み、白砂の砂盛に突き刺すのだった。
一花が19歳となった今では、いくつかの鈍く光る刃が乱杙(らんくい)のように突き刺さっている。

〈凄い想像力ですね。序を読んで惹き込まれれば、もう、この作品の虜です。そう、狂気の物語には名前をからかわれることぐらいで傷つくガラスの心を持った神経質な若者が必要なのです〉

義理の兄・篠治が後を継ぐ錦木家の庭職人となった一花。
ある日、南禅寺にある郷田邸から仕事が入る。そこは50年前に無理心中のあった曰く付きの邸宅だった。
当時、その邸宅は金持ちの妾の屋敷で、出入りの庭師と妾とがいい仲となり、
心中を試みた末、庭師は死んだが妾は傷を負うものの生き残ったのだとか。
錦木家に古くから勤める老庭師の芳吉と一花がその仕事を負うことになる。
が、取りかかった初日、芳吉が脚立から足を踏み外し、その日の夜半に息を引き取る。
「あの庭に手ェ出したら、あかん」という言葉を残して・・・。

〈40年前の心中はともかく、剪定の初日に職人に庭で死なれたら、かないませんねえ・・・〉

今の屋敷の主人は郷田曄江(あきえ)という三十代とも四十代とも年齢のわからない女。
清婉な落ち着いた気品があり、一花にとっては気になる存在だった。どこか母親の面影がある曄江・・・。
芳吉の事故も一花が曄江に見とれていなければ防げたかもしれなかったのだ。

芳吉の代わりには親方である篠治が入ることとなった。
郷田邸の庭は雑然としていて、無秩序で、本来の『眺め』を無視したむちゃくちゃな庭だった。
しかも植わっている樹木のすべてが、匂いをもつ香花木である。
立木を植替えようとするも、曄江とともに邸宅に住む老婆の勢(せい)が凄まじい剣幕で怒りだし、植替えることを容赦しない。

少しずつ篠治と一花にも、この屋敷のことが理解できるようになってきた。
曄江はこの邸宅の主人の一人娘で、勢は50年前に心中事件で大怪我を負った妾の妹であったのだ。

底冷えの深い日、庭で仕事に取りかかろうとした一花は、誰もいないはずの庭でハサミの音を聞く。
「誰やっ! 出て来いっ! 隠れたかて、わかったあるで!」と叫ぶ一花に、
「聞かはったんかいな、あんさんも……」と、そばで勢が立っていた。
勢によると、50年前に亡くなったはずの庭師が手入れをしているのだという。
「悪い女に引っかかったばっかりに……命落とさはったのや……」
実の姉を“悪い女”という老女・・・。

今宮神社のやすらい祭りの夜、祇園の歓楽街で篠治と曄江が密会していることを一花は知る。
その日から、一花は郷田邸へ潜り込んでは篠治と曄江の逢瀬を覗き見るようになった。
次第に篠治を刺殺し、曄江に飛びかかりたい衝動にかられるようになる。

ひと月半ばかりたった蒸し暑い夜、遅くに帰ってきた篠治に、一花の感情が爆発する。
芳吉の死んだ庭で毎夜、曄江と乳繰り合っている篠治に我慢がならなかったのだ。
篠治の部屋に行くと彼はベッドの上に大の字になり、軽い寝息を立てていた。
彼のあらわになった胸元には鮮紅色の大輪の刺青があった。薔薇の花弁のようなそれは曄江の唇が創った花弁であった。
走り去りたい衝動をおぼえはしたものの、体は動かない。一花は篠治の胸を吸っていた。曄江の舌が一花の唇を押し分けて暴れ込んでくるのを感じた。
その夜から一花は秘密の楽しみを持つようになった。

〈う~ん、なんだか安物のレディースコミックのような妖しい展開になってきましたね(笑)。このまま陳腐な展開に陥るのではないかとハラハラしてしまいます〉


あらすじの後半に続く・・・。





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