ザ・うらたじゅん 全マンガ全一冊 その3

2020年08月25日 16:07


二つめは「発禁・櫻御前」(『幻燈』6号所収)。

⑤20082520_R


戦中、赤紙が来た印刷工の青年が、遊郭である橋本へ筆おろしに行き、背中に八重桜を彫った女郎と一夜を過ごす。
但馬の寒村で育った女郎と、奈良の街道沿いの田舎町に生まれながらも、行商人の父親に連れられ旅から旅への暮らしをしていた青年。
青年は満足に学校にも行けず、友だちもおらず、いつも一人で絵を描いていた。

「あなたの絵をみてみたい」
「・・・もしも生きて帰れたら 君の絵を描かせてもらえませんか?」
「喜んで・・・」「生きて帰って・・・また会いに来てください」

シベリアの行軍や極寒のラーゲリ(強制収容所)でも、彼女に会うことを夢見て、生きることをあきらめなかった青年。

復員して橋本遊郭に女郎を訪ねるが、宇治で進駐軍の軍人のオンリーになっていることを知る。

⑥20082521_R

戦後、青年は「商売が成功したらその金で酒を造りたい 桜吹雪のように金箔を散りばめた極上の酒を・・・」と、春本づくりに身をやつす。

限定百本の「櫻御前」と銘打った密造酒は、ラベル一枚一枚に手書きの八重桜が描かれた。ただ、製造してすぐに検挙され、酒は押収。しかし官憲が酒を猫ババして横流ししたため、好事家たちの手には渡った。

時は経ち、老人となった青年は棺桶代に残しておいた百万円で、「櫻御前」をオークションで買い取る。

「いや・・・もう長うないし 死ぬ前にひと口 自分の造った酒を呑みたくなってな・・・」
立ち退きを迫られているボロアパートの一室から、娘に電話で詫びている。



橋本遊郭がかもしだす悲哀と風情ある街並みのカットが、物語をさらに悲しくさせています。






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