ザ・うらたじゅん 全マンガ全一冊 その2

2020年08月25日 16:07


さて、うらたじゅんさんの作品の中から、京都を舞台とした作品を二つ紹介しましょう。

一つめは「河原町のジュリー」(『幻燈』7号所収)。

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まさに、うらたさんが高校を卒業後、「どやって生きていこうか」と悩み、京都の街をうろうろしていた頃が描かれている作品です。

親子ゲンカをして家を飛び出してきた少女は、京都に住む友人をたよって夜を明かし、お腹が空くとデパートの地下で試食めぐり。

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パン屋で食パンの耳をもらって鴨川の河原で食べ、橋の下に住む気さくなおじさんたちと交流するも、「ある橋の下のその人はいつも ひとりきりで彫刻のように じっとした姿勢で本を読んでいた」「どんな本を読んでいるのか 聞いてみたかったが 声をかける勇気はなかった」。

④20082506_R

それが、河原町のジュリーです。


行きつけの喫茶店に入り、そこで出会った名前は知らないが顔なじみの男の子の家に泊まり、その部屋で一枚の絵に気づく。
「あの絵・・・誰が描いたの?」
「この間までここに居候してた金太って奴が描いた」
「この人・・・もしかして鴨川の橋の下でいつも本を読んでいるおじさん?」
「うんそうだよ 君も知っているの?」

春に九州から無一文で京都にやってきた金太は、しばらく橋の下で野宿をし、“橋の下のおじさん”とも顔見知りになって、幾度かしゃべったことがあるらしい。おじさんは自分の素性は何も話さなかったが、名前を聞くと「アイロンです」と言ったという。

「ふーん・・・アイロンさんっていうのか・・・」
少女が友人の部屋で「a man of iron」を辞書で引くと、「鉄の人(意志の強固な厳格な人)と書かれていた。

少女は河原町通りでも時々アイロンさんの姿を見かけた。周囲からの好奇の視線を眼中に入れぬ悠然とした顔で、いつもゆっくりシケモクを拾いながら歩いていた。



実在した河原町のジュリーが本当に自らを「アイロン」と名乗ったかどうかは知りませんが、「どうやって生きていこうか」と悩みながらあてどなく京都の街を歩く少女と、社会をドロップアウトした河原町のジュリーの姿が交差する、わずか16ページの物語。社会に戸惑いながらも真摯に生きようとし、生きていかざるを得ない人間の不器用さが垣間見える佳作となっています。






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