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大文字 五山送り火 その2

2011年08月16日 23:29

花洛名勝図会「大文字送火」 - コピー
〈『花洛名勝図会』(元治元(1864)年刊行)より 大文字送火〉


大文字にちなむ言い伝えとして・・・、
丸い盆に水や酒を入れ、これに送り火を映して飲むと中風にかからないとか、
松割木(護摩木)に自分の名前と年齢を書き、山上の松割木とともに焚くと厄除けにきくとか、
焼かれた後の割木の灰を飲むと、一年が安息に暮らせる・・・などと言った俗信が今も残されています。

祇園祭と同じように、京都の町の人々の心意気で400年ちかくにわたりつづいてきた「送り火」も、近代に入り残念ながら幾度かの中止をみました。
最も影響が大きかったのは、明治初年から始まった廃仏毀釈運動です。京都府は明治5(1872)年に「盂蘭盆会ト称シ精霊祭等停止ノ事」を通達し、「送り火」を含む盂蘭盆会を禁止。明治16(1883)年に解かれるまで大文字が灯されることはありませんでした。

賀茂大橋よりDSC04458_R
〈賀茂大橋の西詰めより眺める普段の大文字山〉

また、戦時中の昭和18(1943)年から昭和20(1945)年までの三年間、資材人手不足や戦時中の灯火管制の理由から点灯が中止されていました。
ただし戦時中の大文字で忘れてはならないのが、「白い大文字」です。
これは昭和18年8月16日の早朝、京都市立第三錦林国民学校の児童や父兄、そして地元住民らが、白い服装で、大きな白いハンカチ、布を持って、大文字山に登り「大」の字に並んで白い文字を描き出したのです。戦意高揚と、戦没者の慰霊の気持ちを込めてのものでしたが、もちろん例年の盂蘭盆会としての伝統を繋いでおきたいという強い思いがあったのでしょう。いかに市民にとってこの恒例行事が大きい存在だったかがうかがわれる悲しい逸話です。そして翌年にも同じく白い大文字は京都の町に浮かび上がったのでした。

さらに昭和38(1963)年には大雨のため、大文字だけ点灯することが出来ず(他の四山は灯されました)、翌日に延期されるという珍しい事態も・・・。

賀茂大橋よりDSC04454_R 〈賀茂大橋より〉


そして、この大文字、たびたびイタズラの標的ともなってきました(苦笑)。

その中でも有名なのが、昭和47(1972)年10月30日の夜に、送り火の季節でもないのに灯った事件です。
学生運動も一段落したこの年、運動崩れの暇な京都市内の大学生が酔狂で、大文字の点灯を計画。70人あまりの学生(大文字の火床と同じくらいの人数)が参加し、夜の大文字山に登って、懐中電灯で「大」の文字を照らし出したのです。

また平成15(2003)年9月13日には、18年ぶりのリーグ優勝が間近に迫った阪神タイガースのマーク「HT」が「大」のかわりに灯もったのも記憶に新しいところです(といってもこの時は25名ほどの人数しか集まらず、うっすらとでしたが・・・)。

イタズラの中には、たびたび「大」を「犬」に変えようと、送り火当日、大文字山に忍び込む輩が絶えず、近年の厳しい入山規制へと繋がりました。

そして、イタズラをした人間は、保存会の人にこっぴどく怒られ、“宗教行事”であることを滔々と説かれるらしいのですが・・・、この「大文字」、宗教行事と称しているわりには、たびたびイベントでの点灯もなされてきたのです。

古くは明治23(1890)年4月8日、琵琶湖疏水竣工祝賀夜会で灯され、
明治24(1891)5月9日にはロシアの皇太子(大津事件で有名な後のニコライ2世)の入洛に際し、歓迎の意を表して点火し、
明治27(1894)5月15日には明治天皇の京都訪問に合わせ、日清戦争勝利祝賀のため点灯、
明治38(1905)年6月には日本海海戦での勝利を祝し、また同じ年の11月には海軍大将・東郷平八郎の凱旋に際して灯され、
昭和10(1935)年4月に満州国皇帝・愛新覚羅溥儀が京都を訪れた際には、大文字を灯して歓迎の意を表し、
近年では、平成12(2000)年12月31日に京都市の「21世紀幕開け記念事業」の一つとしてミレニアム記念という意味不明なこじつけで灯されたりして・・・(苦笑)。

出町橋よりDSC04461_R 〈出町橋より〉

もはや宗教性を超えて、イベント化、観光化とは切っても切り離せない「五山送り火」ですが、8月16日の晩にこの「送り火」を見ながら手を合わせて、亡き人を思っている人もいるのですから、悪ふざけをおもしろがるのも、ほどほどに・・・。





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