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パッチギ! その4

2010年09月25日 23:20

『パッチギ!』の原案は、松山猛著『少年Mのイムジン河』(2002年、木楽舎)です。

少年Mのイムジン河_20100925215404

松山氏は、「平凡パンチ」「ブルータス」「ポパイ」等の雑誌編集者としてよく知られていますが、
編集・ライター業と並行して、ザ・フォーククルセダーズや、サディスティック・ミカ・バンドをはじめ、多くの作詞を手がけています。

松山氏は1946年生まれで、地元の日吉ヶ丘高校の、おそらく美術工芸科(後の銅駝美術工芸高等学校)の出身だったはずです。
生まれ育った泉涌寺、東福寺界隈は、京都でもディープな町として有名で、かつては、京都で最も物価の安い地区でもありました。
少し西に行った東九条には在日朝鮮人、韓国人の方が今も多く住んでいます。

『少年Mのイムジン河』は、松山氏と「イムジン河」との出会いが描かれた小さな本です。
映画の印象的なエピソードも、この本から取られていて驚きます。人と人との“出会い”って、ほんと不思議なものですね。


中学生になった松山少年は、ヒロシ君という後に陶芸家になる同級生と、京子さんという弁論大会で一等賞を取る2級先輩の女性と友だちになります。
京子さんは朝鮮系の人で、民族の違いからイジメを受け、「人間どうしは理解し合うことによって、表面的なちがいを乗りこえ、仲よく生きられる」と主張し、一等賞を受賞したのでした。

彼らは学校の中で夢を語り合うグループとして仲よくしていましたが、一方、学校の外では市立中学生と朝鮮系の学校とのいさかいやケンカが絶えません。
その頃、世間では安保闘争が激しく、民族や文化間のいさかいだけでなく、「同じ国の中でも、考えがちがう者を、取り除こうという力がはたらいてしまう」ことに松山少年はショックを受けます。

松山少年は次第に、「京都で続いている、中学生どうしの小さな戦争のような、争いごとをなくせたら」と考えるようになります。
そこで原田先生に、ある計画を相談します。
朝鮮中学校と松山少年の通う月輪中学校で、サッカーの対抗試合をして、スポーツでたたかうことによって、お互いの理解を深め、友だちになろう、というものでした。
原田先生は、計画に賛同してくれ、「君たち中学生が自分たちでやってみるほうが、いちばん理想的だから、試合の申しこみは君たちでやってごらん」と、温かく見守ってくれたのでした。

そして、松山少年は銀閣寺近くの朝鮮中高級学校に行き、小学生時代の友だちで、今は朝鮮学校に通っている子を通じ、サッカーの試合を申し込みます。
そのとき校内で聴こえてきた曲が、どこかものがなしいメロディーの「イムジン河」だったのです。
またその頃、仲よしだった京子さん家族が帰国船で北朝鮮へ帰ることが決まったのでした。

ブラスバンド部でトランペットを吹いていた松山少年は、自宅近くの陸橋でいつも練習をしていました。そこは大石橋と呼ばれていた九条大橋でした。
大きな声を立てても、迷惑がかからないとの考えからでした。
そこに、同じ考えを持った少年がもう一人いたのです。
それが、朝鮮中学に通っていた文くんで、サキソフォンの練習に通っていたのです。
だんだん、気が打ち解け、仲よくなった二人でしたが、ある時、松山少年はたずねます。
朝鮮中高級学校にサッカーの試合を申し込みに行った日に聞いた、あの曲のことをです。

少年Mのイムジン河_20100925215623
〈大石橋。『パッチギ!』では主人公・康介がギターを欄干に叩きつけ、鴨川に流してしまいます〉

しばらくして、文くんが松山少年にあるものをくれます。それは文くんのお姉さんがメモに書いてくれた朝鮮語の歌詞と1番の日本語訳、そして新しい朝日語小辞典だったのです。
文くんによると「北と南に引きさかれた朝鮮の人たちが、いつの日か平和な日を迎えられ、自由に行き来できることを願って作られた」歌でした。

その後、高校に入った松山少年でしたが、北朝鮮に帰国した京子さんからの手紙が、いつしか途絶えてしまいます。
ヒロシ君は陶芸訓練所に入るも、胸に影があることがわかり、遠くのサナトリウムで療養することになりました。
さらに、松山少年の最愛の父親もこの世を去り、それまでにない孤独を味わうのでした。

そんな中、松山少年のたましいの中の欠けた部分を、うめ合わせるものが詩だったのです。


少年Mのイムジン河_20100925215731
〈現在、このあたりの鴨川東岸は都市計画整備事業の工事中です。東岸にあった朝鮮部落の家々もすでに取り壊され更地となり、数年後には光景も大きく様変わりするようです〉





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