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オレンジロード急行 その3

2011年05月21日 01:55

奈良で若い夫婦の車を狙う、かの老人カップル。いつも通りの早業で車をかっぱらった二人だったが、車の後部座席には小さな男の子が!

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誘拐事件の発生に色めき立つ刑事(原田芳雄)。最後の海賊放送が行われていると報告する若手警官に「大事件なんじゃよ、こっちは。誘拐か、初体験だな、何から始めちゃおうかな」と興奮ぎみ。

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若夫婦のマンションで逆探知機を設置し、ノリノリの刑事をよそに、老カップルと子どもを乗せたカローラ、そして海賊放送をするトレーラーは、それぞれ和歌山へ向かう。

鈴木鈴之助(嵐寛寿郎)が向かいたかった先は、和歌山のアメリカ村(美浜町)だった。

彼の郷里でもあるその土地で、兄弟のように育った友人とよく海を眺めた一本の大きなミカンの木。そこに登って「いつか海の向こうに行く」と言ってカリフォルニアに本当に渡ってしまった友人。その友人は帰郷を夢みながら、郷里のアメリカ村に別荘を建て先に妻を日本に帰すが、友人本人は日本に戻ることなく、カリフォルニアで死んでしまったのだった。その幼少の時の思い出のミカンの木を一目見るために、鈴之助は一目惚れした田中もと(岡田嘉子)とともに、自動車を盗み続けてまでも、和歌山に向かっていたのだ。

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〈この町は明治期よりカナダのスティーブストンという土地へ集団移民をした町として知られ、出稼ぎを終えて町に再び戻ってきた人たちが洋風の民家を建てたことから、通称・アメリカ村と呼ばれるようになった実在する集落です〉


警察無線を傍受できるトレーラーの三人は警察の包囲網が迫る自動車泥棒を心配するが、次に盗難に遭うのは・・・彼ら。

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子どもを連れた老カップルは、ダンプ(中島ゆたか)をおろし、トレーラーをかっぱらう。が、後ろの放送室には流(森本レオ)とファイト(小倉一郎)が乗ったまま。トレーラーを盗まれたことに気づいた二人は、老人を警察に突き出すこともできず、この泥棒された様の実況放送へと切り替える。

取り残されたダンプは、海辺にたたずむカップルの自転車を盗んで、トレーラーを追いかける。そしていつの間にか、海賊放送は窃盗老人に対するインタビューへと悪ふざけ。

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合流したダンプは流の長いインタビューにあきれ顔。「ほっといたら、いつまでインタビュー続けるかわかんないものね、あの馬鹿・・・。なにしろ、終わり方っていうものを知らない男だから・・・」。


彼らが海岸べりで一晩を明かすと、老人カップルの行方は知れず・・・。しかも子どもは残されたままで。老人はダンプの盗んだ自転車で逃げていて、このままでは彼ら三人が誘拐犯になりかねない。なんとか警察の検問をかいくぐり、彼らは和歌山の南端へと急ぐ。

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その頃、老人カップルは友人が建てた別荘にある、思い出のミカンの木へとたどり着いていた。「子どもの頃には天まであるように思えたんですがねえ・・・」。それは小さなミカンの木だった。

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鈴之助は思い出のミカンの木の枝を折った。すると家の中からは友人の妻であるメリー(高杉早苗)が「コラー、ミカンドロボウ!」と片言の日本語でホウキ片手に飛び出してきた。思わず逃げる二人。その二人を見ながらメリーはつぶやく。「ヒドイヨ。ワタシのダイジナ、ダイジナ、オレンジの・・・トゥリー」。

その「オレンジのトゥリー」と日本語で喋ったメリーさんの言葉を思い出し、すがすがしい笑いを漏らす鈴之助。友人が亡くなった今も、その妻のメリーが思い出のミカンの木を守っていたことに感慨無量だったのだ。

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〈鈴木鈴之助の幼なじみの妻・メリーには、高杉早苗。『宗方姉妹』(監督・小津安二郎、1950年)の時にも紹介しましたが、三代目市川猿之助の母親ですね〉


思い出のミカンの枝を太平洋に投げる鈴之助。「カリフォルニアまで流れていくといいですね」と見守る、田中もと。

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警察はすでに、海賊放送の電波の発信源をキャッチしていた。海岸線の建物に集まる警官。しかし突入した警官隊をあざ笑うかのように、あったのは「海賊放送局は永遠に不滅で~す!」とテープから流れる声のみ。

誘拐された子どもは無事に親の元に戻り・・・、彼らはすでにメカの船に放送機材を積み込み太平洋沖に出ていた。

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海岸から遠くの海を見る刑事。「追いますか」の警官の問いかけに「あいつらが本物の海賊になったら、その時はとっつかまえてやる」と(笑)。

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あいかわらず、大海原に出てもどっちの方に行けばわからない彼らだったが、最後に流が決断する。「よっしゃ、この際、思い切って領海の外までいてこましたろか。それやったら電波法に引っかからんと放送できるで!」。
ダンプ「いいね、それ、あんたもたまにはいいこと言うじゃないの。私たち今日から本当の海賊になるんだね」。
ファイト「まだ放送やるっちゅうんか、どないして食うていくねん」。
流が釣り竿を指しだし「魚や」。
ファイト「エサも付いとらんのに釣れるわけないだろ」。
ダンプ「ミカンなら釣れそうよ、ほら」。
ダンプの目線の先には、鈴之助が投げ込んだミカンの枝が。
メカ「カリフォルニアまで羽島さんに会いに行きましょうか~」。

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観ている者の夢を潰すことなく、モラトリアムからの脱却を描いた(ように見える)エンディングで終わるかと思いきや・・・、かの老カップルは性懲りもなく自動車泥棒を続けていて(笑)。

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若者の親切を次々と踏み倒し、軽快に自動車泥棒をやってのける二人の老人。戦前の映画界のヒーローとヒロインが演じたからこそ、モラトリアムに生きる若者との対比で新しい映画の到来を予感させる作品ともなっていたのかも・・・とも今では感じさせます。

なかでも二人の交わすセリフで印象的なのが、

田中もと(岡田嘉子)「あんな優しい若い人たちばっかり、こんな目に遭わせて、あたくしなんだか切なくって・・・」。
鈴木鈴之助(嵐寛寿郎)「なあに、構いませんよ。優しさだけで生きていけると思っとるから、駄目なんですよ。優しくなくっちゃあ生きていけないかもしれませんが、タフでなくっちゃあ、その資格もないのですよ」。

う~ん、アラカンの口から出ると何でもないセリフも、考えさせられるのです。





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