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お引越し その2

2011年04月18日 02:04

両親の離婚に直面した小学生の女の子が主人公で、タイトルが『お引越し』。そして、始まりの文章が、「今度、お家が二つになります」。この一見、深さを感じさせないタイトルと冒頭の文章ですが・・・、ホントはすっごく深かったりするのです。

上賀茂のマンションに家族三人で暮らしていた、小学6年生の漆場漣子と両親。
離婚のため父親が伏見のアパートに引っ越し、最初は家が二つになると、それほど親の離婚を気にしていない漣子でしたが・・・。

父親の引っ越しの手伝いを済ませ、自宅のマンションに帰ってきた漣子は、三人の名前が記された銅板の表札を見て「変な感じ」を起こします。
『漆場賢一』は居心地が悪そうでした。
私、『漆場賢一』が銅板の上から消えた所を想像した。したら、
  なずな
  漣子
に、なって、漆場が全部なくなりました。
(中略)
首をちょん切られたみたい。
少し気分が悪くなって、ムカムカしました。
バーカ。

そう、これが最初の違和感だったのです。三章立ての作品中において、二章目の冒頭でようやく出てくる、主人公・漣子の違和感。それだけで、この作品の持つ“ユルさ”と“軽さ”はわかるでしょう(笑)。
引っ越しの手伝いに来ていた、父親の大学時代の後輩「布引くん」や、彼の彼女「ワコさん」相手に対等に会話を交わす“おませ”な主人公にとって、両親が離婚することくらいは、何でもなかったのです。
そっだぁ、冬休みに、とうさんが仕事でいない時、あそこを秘密の遊び場にしよう。そして、クラスの仲よしやミノルをそん時に連れていって、お家が二つになったこと、話そう。キィーメタ。
ってね(笑)。

ところが、母親との二人だけの生活になり、新しい表札を書く段になって、漣子の違和感は切実な問題へと発展します。
母親が離婚をきっかけに、旧姓の「星野」に戻ると言い出したのです。
そして、自分の名字を「漆場」のままでいるのか、母親と同じ「星野」にかえるのか・・・小学生にとっては大問題です。
「私は漆場レンコや。漆場違うのはいやや。でも。かあさんと名字が違うのも好きやない」

家が二つになったと呑気に考えていた漣子は、この事実を知らされ、突如、「自分の体が二つに割れたみたいな感じ」になってしまうのでした。

かといって作中では、あからさまに家制度の問題や夫婦別姓などという“ありきたり”な話に流さず、あくまで小学生の主人公がひとりで(小さく)悩んでいるだけなのです。


ただ、その小さな悩みの末、母娘二人の生活のために最初に考えた11箇条の“契約書”(掃除、洗濯、料理など日常生活の決まり事)も1つずつ必要なくなっていき、いつのまにか離婚した母親を一人の人間として考えるようになっていたりするのですから・・・ませています・・・もとい、スゴイです。

それもそのはず。いつも三人で行っていた近所のお好み焼き屋に離婚後、母親と二人で行った帰り、
帰り道で空を見上げて、かあさんと二人、新しい星座を作って遊んだ。でも、何度見上げてもオリオン座も白鳥座もやっぱりそのままで、ばらばらにできなかったんえ。
「かあさん、あれやな、一度ひっついたものは、なかなか離せないもんやなあ」
そう言ってみました。
なんて言葉が出てくる小学生なのですから。


それにしても、「W(ダブ)カセ」「メじゃない」「明菜命」・・・作中での用語や言い回しも時代を感じさせます。ま、これは携帯電話がまだ普及していなかった時代の物語なのですからね。





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