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酒場ミモザ その3

2011年03月20日 01:08

酒場ミモザ_0002 〈『酒場ミモザ 第4巻』〉


マンガ界のツチノコこと『酒場ミモザ 第4巻』、ようやく手に入れました。


『酒場ミモザ』は京都三条にある、座席7席だけの古びた小さなバーが舞台のマンガで、その店には実際のモデルがありました。河原町三条を二筋下がり、小路を東に入った「リラ亭」です。

1957(昭和32)年に開店した「リラ亭」は、1990(平成2)年にマスターの死去により閉店しました(その後、マンガに登場する常連客によって「カリン亭」と名を変え引き継がれるも、その店も2000年に閉店しています)。

「酒場ミモザ」は1992年から1996年まで「月刊アフタヌーン」に掲載され、単行本として全4巻が刊行されましたが、すでに絶版となり、かなり入手困難な代物となっているのです(特に4巻がね)。

2010年5月には、マニアなファン待望の復刻版がぶんか社より刊行されましたが、その中には20のエピソードしか収められず、しかも第4巻のエピソードはいっさい収録されないという、何とも中途半端なものでした。



さて、世間では狂騒に沸くバブル景気の時も、この狭いバーの中で繰り広げられる物語は、温厚なマスターの人柄をあらわすように、ただただ「ゆるく」「ほっこり」とした人情話や京都の風物詩や料理のことなど・・・連載当時からどこかノスタルジー溢れる逸話ばかり。

しかし、4巻を読み終えると・・・地味なマンガの中にも確実に時は流れていて、4年の連載の間に、登場人物が“成長”していたことがうかがえます。

酒場ミモザ_0004

東京から京都に嫁いできて料理が一切つくれなかった女性が、マスターのアドバイスで姑の口に合うおせち料理をつくれるようになり、
東京に住む脚本家のカベさんが京都に越してきて、祇園で飲み屋を営む小菊ちゃんと身を固める決心をし、
マスターの次女がボーイフレンドだったアメリカ人・スティーブと結婚をし、
父親の料理屋で働いている京女の、しのちゃんに子どもができ、
絵描き志望の主人公が初めての個展を開いたり・・・と。


景観論争で問題となった「京都ホテル」が建てられているカットが描かれていたり、祇園祭の山だし町にある町家が賃貸マンションに建て替えられるエピソードがあったり・・・京都の町が激しく様変わりする中にあって、

酒場ミモザ_0008

繁華街の一等地にあるミモザの建物も、大家の代替わりによってテナントビルへと建て替えられることとなり、そのテナントビルに入るか、新しいところに移るかという岐路で、ミモザがいったん休業に入る場面で、この物語は終わるのです。


さて、すべてを読んでの感想は、やはり・・・地味ながらも、いいマンガでした。
マスターをはじめとする登場人物の人柄と、そんなマスターを慕う常連客とのやりとりを愉しんで見つめていたであろう作者・とだともこさんの目線。どの逸話も、おそらく狭いバーの中で実際に繰り広げられていた話なのでしょうが、その柔らかで優しい空気感をこのマンガに描ききった作者の感性は、たいしたもの。

惜しむらくも、4巻で終わってしまった物語ですが・・・おそらくこの作者ならもっと長く書き続けることもできたのでしょうが・・・この長さがちょうどよかったのかも、とも思えます。



最後に、第4巻のエピソードを少々抜粋・・・。

酒場ミモザ_0003

梶井基次郎「檸檬」でおなじみ、今はなき「八百卯」さんも登場です。



主人公が「大地堂」(賀茂大橋の東にある老舗の画材と額縁の店)を出て、ミモザが開くまでの時間つぶしに見つけたジャズ喫茶、その名も「SM SPOT」。同志社幼稚園の近くにあった、実在のジャズ喫茶のようです。

酒場ミモザ_0005

SMといっても、もちろんそっちの方の意味ではなく(笑)、「SWING JAZZ」と「MODERN JAZZ」のことですね。当時は、京都にも多くのジャズ喫茶があり、むしろ、このマンガが書かれた当時は、すでにジャズ喫茶の流行は去った後だったのです。
純喫茶だった「SM SPOT」の客足が遠のき、主人公からミモザの評判を聞き、ミモザに倣って、夜はお酒を出す店に変わるエピソードが語られています。



夏は京都の水がかび臭くなる、というバーでの常連客との会話から、マスターたちがいい水と空気を求めて日帰りツアーで行く先は、長岡京の「柳谷観音楊谷寺」。

酒場ミモザ_0009 酒場ミモザ_0010

ここには眼病に効く霊験あらたかな“独鈷水”が湧いているのです。連載当時は、長岡京市や向日市の水道水は100%の地下水だったことも、描かれていたりして時代を感じますね(後に地下水だけでは供給することができなくなり、2000(平成12)年から府営水道の受水を始めるのです)。



酒場ミモザ_0011

マスターの口ぐせは「おきばりやっしゃあ!」





コメント

  1. ゆま | URL | -

    すごいですね

    こんにちは。酒場ミモザの四巻、私もずっと探してましたので、見事発見されてすごいなあと思いまして。
    懐かしい四巻のエピソード、久々に見れて嬉しかったです、やっぱり隠れた名作でしたね。ありがとうございました。

  2. t.okuno | URL | -

    酒場ミモザ、いいマンガですよね。作品の中ではテナントビルに建て替えられるという話で終わっていますが、今も店舗は路地に残っていますよ。

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