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五番町夕霧楼 その4

2011年05月01日 00:33

五番町夕霧楼 監督・田坂具隆 1963年 東映東京

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もちろん原作は水上勉の『五番町夕霧楼』で、監督は田坂具隆がつとめました。
原作の初出は『別冊文藝春秋』秋季号(1962年9月)、映画の公開が1963年11月。ほぼ原作を踏襲した映画化となっています。

あらすじは、小説紹介の時に詳しく書きましたので省略ということで・・・。


三島由紀夫の『金閣寺』(1956年)同様、1950(昭和25)年7月2日未明に発生した学僧による金閣寺放火事件をモチーフに描いていますが、三島由紀夫の『金閣寺』や、それを原作とした映画『炎上』(1958年)のように学僧の放火に至る心理や経緯をつづった作品ではありません。

あくまで、貧しい家庭を助けるため自らの意志で娼妓となった少女の物語なのです。
そして寺(『五番町夕霧楼』では鳳閣寺)を放火することとなる学僧は少女の幼馴染みとして登場し、少女の廓生活での心の支えとなります。
学僧との清廉な恋、そして遊郭での日常生活や、女将や先輩娼妓との交流を(哀しくも、あたたかく)描いた作品です。


実際の放火犯で、大谷大学の学生でもあった金閣寺の修行僧・林養賢(法名は承賢)は、放火の一週間ほど前に五番町の遊郭に登楼しました。
そこで彼の相手をした娼妓に「もうすぐ大変なことをやってみせるぞ」と漏らしていた事実を原作者の水上勉は事件直後、新聞で目にするのです。
水上は林養賢と同じく、日本海に近い福井の寒村に生まれ、幼い頃に口減らしのため寺に出された経験を持ち、しかも青春時代の大半を五番町で過ごしました。
貧しい境遇と吃音というコンプレックス、そして矛盾だらけの寺の生活で、精神的に窮し放火に至った修行僧に、水上が関心や同情を向けるのは当然のことでした。
その大いなる関心と、自らが体験し見聞きした廓での生活を交えながら創作されたのが、このフィクションなのです。


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主人公の片桐夕子役は佐久間良子ですが、多岐川裕美に見えちゃいました。右は父親役の宮口精二。『古都』(1963年)では、千恵子(岩下志麻)の父親役でしたね。


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夕霧楼の女将・かつ枝役は、いつも名演技を披露する木暮実千代です。しかし、今回は演出上の指示なのでしょうか、原作の女将よりも少しキツイ感じがしました・・・。


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おそらく50年前の千本通りです。「スター食堂」や「関西相互銀行」の看板が見えます。


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売春防止法が施行され赤線が廃止されたのは、1958(昭和33)年。上映の5年前ですね。さすがに夕霧楼のある町並みは、東京大泉の撮影所に組まれたオープンセットでの撮影です。


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50年前の京都北野郵便局。現在も上七軒の同じ場所にあります。かつ枝が夕子のために貯金通帳をつくってやるのです。

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夕子が廓生活で大切にためた貯金通帳。昔の貯金通帳は、こんなのだったんですねっ。



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五番町夕霧楼 その5

2011年05月01日 00:37

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病身の母親、甲斐性のない父親、そして幼い妹たちを残し、与謝半島から京都の遊郭に出稼ぎに行く夕子。妹たちの「ねぇ~ちゃ~ん」と手を振りながら呼ぶ声は、かわいくも、もの悲しいです・・・。ちなみに夕子の故郷は伊根町津母の設定で、実際のロケも同地で行われました。


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呼び込みのおばちゃん役は赤木春恵。この頃からおばちゃん役だったんですね。隣の常連客は東野英治郎です。


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京都の大店(おおだな)の呉服店主人・竹末甚造(千秋実)に水揚げされた夕子。水揚げ代は、当時のサラリーマンの月給5ヶ月分の2万円でした。そして、娼妓が部屋代を払えるようになるまでの一年間は、花代を帳場(店側)と娼妓とで四分六分の割合で分けるのです。遊郭の内情もリアルに映し出してますが、かなり良心的な廓なのではないでしょうか。


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陰気で吃音の学生僧・櫟田正順(くぬぎだ・しょうじゅん)を演じるのは河原崎長一郎。夕子が櫟田の花代を立て替え、いつも幼い頃の楽しい思い出を語り、帰って行くのです。


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修行中の櫟田。回向の稽古の為に、本山に来ていたところを、運悪く呉服屋の主人・竹末に見つかり、五番町に通っていることを本山の坊主にチクられます。


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肺病で倒れ、入院した夕子。先輩娼妓で、遊郭の生活を短歌雑誌に投稿している敬子(岩崎加根子)が見舞いに訪れます。
あこがれは里にはあらず天神の木立の森の青き空かな
ぺたぺたとスリッパの音の冷たくて廓づとめにわれは狎(な)れゆく
疲れたる瞳にあはき朝方の花を呉れたる人の名を知らず
もちろん敬子の歌は水上勉の創作なんでしょうが、いいですねっ!
一番上の歌は、縁先から見える屋根越しの北野天神の森を、故郷である倉敷のことを思いながら見ているという歌だそうです。


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櫟田の自殺を知った夕子は彼の後を追うように、楽しかった思い出の詰まった故郷の百日紅の下で睡眠薬を飲み自殺するのでした。



この映画は確かにいいです。いいのですが原作の方がより、主人公・夕子のしおらしさや素直さが表現されています。それに、夕霧楼の女将や同僚の娼妓たちの年少者である夕子への温かい思いやりも、ね。

難を言えば・・・、劇中の時間の経過を、部屋に飾られる季節季節の扇子の柄で表現したり(安易すぎますね)、
夕霧楼の飯炊きおばさん(岸輝子)を所々で意味ありげにクローズアップしたり(このおばちゃんは劇中でまったく喋らず、不気味。それでいて観客の心理をこの人を使ってあらわそうとしているようで作為的なのです)、
さらには、女将のかつ枝が早朝、近くのお寺の勤行に参加するシーンが突飛に挿入されていたり・・・、
少し不可解なシーンが散見されるのが残念。



五番町夕霧楼 その6

2011年05月01日 23:32

五番町夕霧楼 監督・山根成之 1980年


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前作である田坂具隆監督の『五番町夕霧楼』(1963年、東映)と比べてしまうこの山根成之監督の『五番町夕霧楼』(1980年、松竹)ですが・・・、リメイクする意味がまったく見あたりません。まあ、無難につくられた、凡作です。

作品紹介には、水上勉の『五番町夕霧楼』(1962年)に加え、公開の前年に出版された『金閣炎上』(1979年)も含めて脚本が書かれたようですが、『金閣炎上』(水上勉が放火犯の学僧・林養賢の周辺を取材したノンフィクション的作品)の影響はほとんど見られません。というか、明らかに1963年の田坂作品を脚本的にも演出的にも踏襲し、少し焼き直しただけの作品という印象でした。


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撮影時に20代後半だった松坂慶子ですが、そもそも、19歳の片桐夕子役をこの人の配役にした時点で、失敗でしたね。バニーガール姿で「愛の水中花」を歌い、お茶の間に色気と笑いをもたらした一年後に、この役はちょっと・・・(笑)。しかも、松坂慶子という人はフツーにしていても実年齢より年上に見えてしまうのに、若作りを意識した、お下げ髪姿が役者として痛々しい・・・。


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夕霧楼の女将・かつ枝には浜木綿子。この人は、うまいっ! 演技も別格。


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夕霧楼の元の経営者・酒前伊作の遺骨を持って京都に帰ってきた、かつ枝。女郎たちがみんなで手を合わせている中に、一人だけ芋を食っている娼妓が。って、この演出は女郎をバカにしすぎ。


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なぜか、原作にも、田坂作品にも出てこない活動屋役の横内正が、一躍この作品では夕子の客として重要な配役に。左は娼妓・敬子役の風吹ジュン。


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コンパネでつくった感丸出しの鳳閣寺。



五番町夕霧楼 その7

2011年05月01日 23:33

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ストーリーには関係ありませんが、娼妓に財布をすられたと訴える客は、井上昭文。最近、お見かけしませんねえ・・・。時代劇の悪代官と言えばこの人ですっ。一度見たら忘れられない、名脇役。


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放火犯となる学僧・櫟田正順には、奥田瑛二。


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夕子を水揚げする西陣の呉服屋・竹末甚造には、長門裕之。田坂作品で名演を見せた同役の千秋実の演技に影響されすぎっ(笑)。


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鳳閣寺にいる正順からの手紙で、正順が夕霧楼を訪れることを知り、一張羅のワンピースを新調した夕子。しっかし、何ですか? この紫のケバい衣装は・・・!!
まがりなりにも、1972年から水上勉公認で井筒八ッ橋のイメージキャラクターとなっている「夕子」にこんな衣装を着せるなんて・・・。


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で、出ました! 名脇役といえば、そう、この人、加藤嘉!! 正順の病弱で気弱な父親役での登場です。
この人、この頃はまだ、60代のはずですが・・・枯れちゃってます・・・。しかし、温厚で実直そうなこの風貌にして、実生活では結婚4回のプレイボーイ。しかも3回目の相手は山田五十鈴でした。


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客の一人として田中邦衛も出ています。


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最後に・・・、この映画でもっとも唖然とさせられたのが、この人。役柄は鳳閣寺の一室に住む進駐軍の愛人で女優の五条乃理子。演じるのは、宇佐美恵子という人です。
モデルから女優に転身した人のようですが・・・役柄での化粧と衣装のどぎつさもさることながら、映像を異空間に引き込むほどの大根役者ブリっ!! 外国人が片言で演技しているのかと思っちゃいました(苦笑)。


なんとも、監督のセンスを疑う、微妙にトホホな映画でしたね・・・(狙っていない“微妙なセンスのズレ”がなんとも痛々しく滑稽なのです)。





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