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吉田神楽岡町の大正住宅地

2011年04月12日 00:41

吉田神楽岡町 幻想的な大正住宅地


吉田神社のある吉田山は、高さわずか100メートルの小高い山です。しかし、高い建物のない京都にあって、歴史の詰まった、やけに存在感をもつ山でもあるのです。

DSC01236_R_20110413001140.jpg 〈吉田神社の参道より〉

山腹には吉田神社の他にも宗忠神社、竹中稲荷神社、後一条天皇の菩提樹院陵、陽成天皇の神楽岡東陵・・・。山の東南には真如堂、金戒光明寺が大伽藍を有し、山の西には京都大学の広大なキャンパス・・・。
京都大学の前身でもある旧制第三高等学校の寮歌「紅萌ゆる岡の花・・・」で有名な「逍遥の歌」にも吉田山は歌われるほど、京都大学とは地理的結びつきのつよい場所でもあります。

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〈吉田山中腹からみた大文字山〉

さて、フツーの京都紹介ならこの吉田山山頂近くにある、おしゃれカフェ「茂庵」を取り上げるのでしょうが・・・、

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〈神楽岡通りにある「茂庵」の入り口看板〉


「茂庵」近くの吉田山の東山腹にある“不思議な住宅街”の紹介です(といっても「茂庵」と少なからず関係もあるのですが・・・)。


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この怪しい雰囲気が、写真から伝わるでしょうか・・・。実際、町並みに足を踏み入れれば、幻想的な世界に迷い込んだ気持ちにもなるのです(特におすすめは、神楽岡通りから入るのではなく、吉田山から下りて来るほうが、よりいっそう幻想的です)。

かつて吉田山は様々な社が点在していたことから「神楽岡」とも呼ばれ、今でも町名や通り名として、その呼び名は残っています。

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〈今出川通りと神楽岡通りの交差点〉

大正から昭和初期にかけて、吉田神楽岡町の一画、それも大文字山が正面に見える吉田山の中腹斜面の高台に、次々と家が建てられました。
しかもどの家も、平屋もしくは二階屋の“銅板葺き”の屋根を持ち、全く同じようなカタチの家々が整然と並んだのです。さらにそれらは、売家住宅ではなく、貸家住宅で、山を挟んだ反対側にある京都帝大や三高の教官の多くが、これらの家々を借りて住んでいました。

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〈青銅色の屋根が印象的〉


この家並みをつくったのは大阪の実業家・谷川茂次郎(1864―1940)という人物です。

京都大原の八瀬に生まれた谷川は、大阪で新聞用紙などを専門に扱う運送会社(現在の谷川運輸倉庫株式会社)を興します。そして実業家であっただけではなく、のちに裏千家に入門し茶道に嗜んだ粋な人物でもあったのです。

事業で成功した谷川は、吉田山一帯の土地を所有していて、山頂付近に茶室8席のほか、月見台や楼閣をもつ広大な庭を造園し、たびたび茶会を催していたのだとか。ところが谷川の死後、50年ほど顧みる人もおらず、荒れるにまかせてあった同庭園が突如整備され、その旧食堂棟を使って開かれたのがカフェ「茂庵」で、「茂庵」とは谷川の茶道の号だったのです。

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〈住宅地と吉田山の境界にある「茂庵」の入り口〉

そんな粋人でもあった谷川が造営した住宅地なのですから、趣向が凝らされていないはずがありません(笑)。

吉田山の東山肌の傾斜地に、さらに擁壁を用いて高低差をつくりだし、どの家々からも東山、とくに大文字が一望できるように設計されています。

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〈上の土地と下の土地は家一軒分の高低差がつけられ、擁壁で補強されています〉

そして吉田山の森が迫った住宅地は、風情ある石畳や石段、石垣で張り巡らし、町並みを整えるために屋根を“銅葺き”に統一。

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それでいて、同じカタチの家々は決して派手ではなく、いえ、どちらかと言えば背の低い質素な家で、古めかしい杉垣や漆喰の壁で上質に作られています。

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当初、分譲住宅にせず、貸家住宅とした谷川の意図と、細い石畳と階段を上らなければならない山の中腹にあるという立地条件が、大正時代を想起させる奇跡のような住宅地を、今に伝えているのです。




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