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廓育ち その1

2011年03月22日 02:07

廓育ち 監督・佐藤純彌 1964年

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監督は巨匠・佐藤純彌。
(まっ、巨匠といえども、日本映画史上最大の迷作『幻の湖』(橋本忍監督、1982年)と並び称される“トンデモ映画”『北京原人 Who are you?』(1997年)のような突飛もない作品も生み出していますが・・・そこはご愛敬ということで)

原作は川野彰子の「廓育ち」(『新潮』1963年7月号)と「狂い咲き」(『小説現代』1964年1月号)で、両作を脚本家の棚田吾郎が大幅に改編して脚色しています。

WS000174_R_20110220110901.jpg 〈島原大門〉

舞台は売春防止法が制定される直前の京都の廓・島原(売春防止法は1957年4月1日から施行されました)。
とにかく、リアル・・・、そして素晴らしい映画です。

WS000028_R_20110220110747.jpg 〈島原西門付近〉


この映画の特筆すべき点は三つ。


まず、地味で人間味のない退屈な原作を、廓に囚われつづけた芸者上がりの若い女将の悲哀あふれる劇的な作品に仕上げた脚本家・棚田吾郎の力量。

そして、赤線防止法施行から6、7年経った島原には、まだ往時の面影が色濃く残っていて、しかもこの内容の映画撮影を、町が許可したという点。

WS000068_R.jpg 〈島原歌舞練場〉

最後は・・・主演・三田佳子の圧倒的な演技力。ツンとしたぶっきらぼうな美しさの影にある憂いが、何とも色っぽいのです。この時はまだ20代前半ですよ!(まさか後年、あれほど凡庸な“大物女優”となるとは、この映画からは想像出来ないですね)

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廓育ち その2

2011年03月22日 02:14

幼い頃から島原のお茶屋「末廣」の女将・仙(三益愛子)の養女として厳しく育てられた、たみ子(三田佳子)。辛く陰湿な廓生活から逃れるため、また、遊女と蔑まれないようにと勉強に打ち込み、高校にも通います。

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しかし、そんな彼女の思いとは裏腹に、“高校生芸者”として評判となり、学校は退学に。
その後、女将の仙が脳溢血で倒れ、寝たきりになると、たみ子と仙の立場が逆転。たみ子が帳場に座って「末廣」を切り盛りし、寝込む仙に厳しく当たり散らすのです。
病人の世話をするのは、仙の遠縁の娘・宮子(佐々木愛)。「末廣」に引き取られた宮子は下女として「末廣」で働き、たみ子を姉のように慕っています。

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〈仙役の三益愛子と、宮子役の佐々木愛〉

たみ子が女将になると、その厳しさと薄情さに、次々と芸者がやめていき、そして、お茶屋経営も厳しくなり、さらに追い打ちをかけるように売春防止法が施行されようとしていました。
寝たきりの仙と、宮子を抱え、身動きの取れないたみ子の唯一の希望は、結婚を約束している医学生・新田茂巳(梅宮辰夫)の存在。

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〈右が新田茂巳を演じる梅宮辰夫。二人が歩くのは金戒光明寺の山内〉

結婚の障害となっていた寝たきりの仙が亡くなり、宮子は仕立屋の弥介(中村嘉葎雄)と結婚することとなり、これで、たみ子にも幸せが訪れるかと思いきや・・・。

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〈腕のいい仕立屋・弥介を演じる中村嘉葎雄〉

新田に大学教授の娘との縁談話が進んでいることを、たみ子は知ります。
さらに、島原の世話役・塚田(宮口精二)がたみ子と新田の仲を快く思わずチンピラを使って新田を脅迫し、新田は新田で医学界での出世を望み、次第にたみ子と疎遠に。
たみ子は絶望し、新田と無理心中を図ろうと毒薬を手に入れるも、すんでの所で思いとどまるのです。

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お茶屋「美よし」の旦那・千代松(進藤英太郎)の勧めもあって、乗り気がしないながらも、塚田の妾として生きていくことを渋々受け入れる、たみ子。
島原は売春防止法によって失業する赤線の芸者を“新妍芸者”として登録し、「芸者が客と惚れあって寝た」場合は防止法の適用にはならないと主張。この難局を乗り切ろうとしていました。その門出として、華々しく太夫道中が町を練り歩き・・・。

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〈輪違屋の前を練り歩く太夫道中〉

華々しい町の門出にも、たみ子は乗り気ではなく、「末廣」の帳場で酒を飲んでふてくされています。そこへ旦那風情を吹かせて塚田がやってきました。「もう、おまえは普通の人の仲間入りはでけん、おなごや。おまえかて、金で身任したおなごやないか。人にはそれぞれ分ちゅうもんがあってな、その分を越えた生き方しよう思うても世間にはなかなか通らんもんや。廓育ちは、廓の女らしい生きたらええねん」。

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〈島原の実力者・塚田には宮口精二〉

たみ子は塚田を毒殺します。「こんな人がいるさかい廓っちゅうなもんがないようにならへんにゃ。子どもの時分から苦しんできたんは、こんな人らのためやったんやっちゅう気がしてきたんや」と。

太夫道中の賑わいのなか、ひっそりと島原の裏門から警察に連行される、たみ子。長年、望んでいた廓を出られる時でした。そして、たみ子の表情はどこか晴れやかで・・・。

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廓育ち その3

2011年03月22日 02:18

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上空から見た島原の様子。画面左が北。住吉神社の境内や、今はなき西門、そして旧国鉄の線路も見えます。


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映画の終盤。幼い頃から比較されてきた同じ“おやまの子”である雪枝(塚原佳穂理)とたみ子との対比が印象的。

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新しい島原を象徴する太夫道中の太夫に扮する雪枝と、清々とした表情で警察に連行される、たみ子。


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「末廣」の女将・仙を演じる三益愛子の夫は、直木賞作家で後に大映の専務ともなる川口松太郎。そして「川口浩探検隊」シリーズの川口浩は息子でもあります。『廓育ち』では因業婆の役を熱演。


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「末廣」の物干し台からの風景。丹波口駅周辺にあった大阪ガス京都工場のガスタンクが見えます。1983年にはタンク設備も一切撤去され、その後、京都リサーチパークとして運営されています。


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太夫が客とまみえる際、小さな禿をともない、杯を使って顔見せをする儀式「かしの式」。


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お茶屋「美よし」につとめる、つた江を演じるのは、緑魔子。太夫を夢見て厳しい廓での生活に耐えているなか、「美よし」の旦那・千代松(進藤英太郎)に太夫の空いている鑑札をちらつかされ、甘い言葉に酔って身をまかせてしまいますが・・・、

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結局、約束は破られ、失意のうちに、憧れていた太夫の裲襠(うちかけ)を纏って、当てつけるように自殺してしまいます。



さて、本作ではドキッとする名言も・・・。

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初心者の女郎に、寝間の付け方を教える仙の言葉。「男はんの体の重みは、そのまま札束の重みやと思うくらいにならな、あかんのやで」。

医師としての出世を望み、教授の娘と一緒になり、たみ子と別れる決意をした新田に対する、たみ子の言葉。「あんたもやっぱり廓の人やったんね。家という廓、学閥という廓・・・。どこもかしこも廓の癖して、なんでみんな偉そうな顔してんにゃ。その廓の中で、みんなウジャウジャ生きてるくせに。一人前の人間らしい顔せんといてほしいわ!」






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