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二人日和 その1

2011年03月01日 00:28

二人日和 監督・野村惠一 2005年

WS000231_R.jpg 〈春の賀茂川〉


寡作で知られる『ザ・ハリウッド』(1998年)の野村惠一監督が7年ぶりに撮った作品(といっても、だれも『ザ・ハリウッド』を知らないか・・・)。

さて当初は『TURN OVER 天使は自転車に乗って』という題名で公開されていたこの映画ですが、のち『二人日和』と改題されました・・・題名があらわす通り、地味ながらも、いい映画です。


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45年間連れ添ってきた寡黙ながらも仲睦まじい夫婦。そんな夫婦の妻が難病を患い人生の終わりに直面する。そこにふとしたことで知り合った大学院生と彼の彼女。京都の日常の風景の中、二組の男女の人生が交差し、夫婦の絆とは何かを考えさせられる・・・なんだか小津安二郎風なんです(もちろん監督は明らかにその線を意識的に目指しているのでしょうが)。


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主演の藤村志保は、難病ALSに冒され、手足の自由が失われていく難しい役どころ。しかし演技を演技とは思わせない、自然な振る舞いはさすが、大女優。


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夫役の栗塚旭は、ある年代以上の人にとっては“懐かしい”二枚目俳優として記憶に残っていることでしょう。

1965年のテレビドラマ『新選組血風録』(NETテレビ(現在のテレビ朝日))や1966年の映画『燃えよ剣』(松竹)で主役・土方歳三を演じ、あまりの好演でアタリ役となってしまい、以後、なかなか他の役がつかなかったという“不運な役者”でもあります。

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〈映画『燃えよ剣』(監督・市村泰一、1966年、松竹)より〉

実際、その後は役者として、テレビ時代劇のゲスト出演などが多く、土方歳三役で一世を風靡した頃の勢いはみられなくなり、1980年代はほぼ表舞台から消えざるをえない状況でした。その反面、鹿ヶ谷の「哲学の道」沿いで経営していた喫茶店『若王子』は、往年のファンで賑わっていたそうです・・・現在は残念ながらこのお店、休業中というか、“ほぼ”廃業のようですね)。

WS000318_R.jpg 〈錦市場〉

すでに60代後半となっていた栗塚旭がこの作品で演じたのは、神主などの装束をつくる寡黙な職人。子もなくひとりで妻の看病をし、代々受け継いできた店を閉める決心をし、そして妻に先立たれてしまう。不器用ながらも妻想いの老人を違和感なく演じています(二枚目だった頃の往年のファンは、老いた演技をする栗塚旭をどう思うのでしょうね・・・)。


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さて、野村惠一監督は、商業監督として、それほど高名ではありません。しかし、先にも挙げた『ザ・ハリウッド』(1998年)では、野村監督の映画に対する温かな思いが強く伝わってくる、いい映画です。この作品も舞台は京都で、レンタルビデオ店で働く外国人留学生と、その店で後輩として働く家出青年の交流を描いた物語でした。

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野村監督は京都出身で、日大芸術学部を卒業後、1968年に大映京都撮影所に助監督として入所します。しかし、不運にも1971年に大映が倒産。その後はフリーで広報映画や企業映画など、いわゆる陽の目を見ない実用的な映像を撮り、制作費が貯まれば、自分の撮りたい作品をつくってきたという苦労人のようです。作品には『森の向こう側』(1988年)、『真夏の少年』(1991年)、『ザ・ハリウッド』(1998年)、『二人日和』(2005年)、そして最新作は『小津の秋』(2007年)。

WS000308_R.jpg 〈葵祭〉

洗練された映像でも、劇的な脚本でもありませんが、監督の映画に対する情熱が強く感じられる、懐かしみのある映画・・・それが『二人日和』なのです。




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二人日和 その2

2011年03月01日 00:32

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御所近くに住み、代々、神祇装束司(じんぎしょうぞくし)を営む職人・黒由玄を演じるのが、栗塚旭。毎日、梨木神社の「染井の水」を汲みに行き、丁寧にコーヒーを淹れて妻と一緒に飲むのが日課。かつては、醒ヶ井(四条堀川)、県井(京都御所の西)とともに“京都三名水”のひとつでしたが、今でも飲めるのは、この「染井の水」だけです。


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藤村志保が演じるのは不治の病であるALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症する黒由千恵。徐々に指先、脚先から自由を奪われ、肺の筋肉をも弱らせるという、当人にとっても周りの人間にとっても、つらい病気です。


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黒由が日課である染井の水を汲んで帰るとき、いつも小学生相手に手品を披露し楽しませている青年が伊藤俊介(賀集利樹)。黒由は妻のリハビリにと、彼を家に招き、妻に手品を教えてもらいます。子どものいない夫婦にとっては彼との交流は息子が出来たように楽しく、妻・千恵の顔にも笑みがこぼれるのです。賀集利樹も嫌みなく好青年を演じていて、なかなかよかったです。


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賀集利樹演じる伊藤俊介は、遺伝子の研究をしている大学院生。そして、指導教授役にはフォークルの、きたやまおさむ(北山修)センセイ。この人、野村監督の『森の向う側』(1988年)では、なんと主役を演じていました。この作品は村上春樹原作の短編小説「土の中の彼女の小さな犬」を映画化したもの。そんな縁から今回の友情出演にいたったのでしょうが、北山修は1991年の『真夏の少年』にも出演していたようです。野村作品の常連ですね。


WS000254_R.jpg 〈撮影は荒神橋のたもと〉

伊藤俊介(賀集利樹)の恋人・小林恵には山内明日。「明日」と書いて「めいび」と読むらしいです。撮影当時は高校生で、女優としての仕事も初めてに近かったようですが、大人っぽくて大学院生の恋人としては違和感ナシですね。アメリカ留学を決断した俊介と彼女が別れるというストーリーが、老夫婦の物語とリンクして叙情さを増しています。


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子どものいない老夫婦にとって、いつも店を訪れる娘のような存在が、姪の矢沢江梨子。なぜか華道家の池坊美佳が演じています(苦笑)。この映画の数少ない違和感が、この人の出演そのものと、一オクターブ上がったセリフの言い回し(素人だからしょうがないんですが・・・)。いやしくも、華道池坊家がこの映画のスポンサーか・・・と勘ぐりたくもなります。ところが・・・この人の下手な演技が、なぜか映画の世界観を潰していないことが、不思議。


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むしろ、友情出演で、千恵を見舞いに来る友人役の市田ひろみ。一場面だけの出演でしたが、この人の演技の方がこの映画にはそぐわないような気が・・・。






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