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京都怪談 おじゃみ

2010年10月18日 01:25

京都怪談 おじゃみ 著者・神狛しず 2010年

京都怪談 おじゃみ


『京都怪談 おじゃみ』(メディアファクトリー刊)は、不思議な怪談小説です・・・。怪談とはいえ、暗鬱な感じではなく、乾いた文体で・・・一般的に陰湿といわれる京都弁を使っているのにね・・・。
この初見の著者はなかなかの文章の書き手ですね。端的に言って上手いです。


本書は第4回『幽』怪談文学賞・短編部門大賞受賞の「おじゃみ」と書き下ろしの全6編からなる怪談短編集で(『幽』怪談文学賞というものも知りませんでした・・・)、著者である神狛しず(かみこま・しず)さんのデビュー作のようです。
メディアファクトリーの作者紹介では、神狛さんは、京都市生まれで、現在は府下五里五里の里(城陽市)在住(五里五里の里って今も言うんですね(笑))。
2008年には別名で「第6回北区内田康夫ミステリー文学賞大賞」というのを受賞しているみたいです。

所収のすべての短編が、一応京都が舞台となっていますが、地名や場所に依存した小説というよりも、著者にとっては“京ことば”と、少しの“因習”が舞台装置として必要だったのでしょう。
おそらく、この著者は、舞台が京都でなくても、怪談小説(ミステリー)でなくても、器用に書けちゃう人だと思います。


収録作品は、

「おじゃみ」
幼稚園児のひとり息子をもつ幸せな妻。しかし、押し入れの奥には10代の頃に産み落としたもう一人の子どもがいて・・・って話です。
産み落とした児をばれないようにと、ちりめんの布で縫い合わせた袋に入れ、小豆をつめれば、そう「おじゃみ」(お手玉)のできあがり(苦笑)。
化け物とはいえ自分の子どもを、バルサンを焚いて出て行かせようとするも、出ていかない。これも因果と“ゴキブリや鼠みたいに”走りまわるのを好き勝手にしているが、時折、自分に甘えてくるこの化け物を、「図に乗るな」と大きく振りかぶって大黒柱に叩きつける妻・・・って!

「前妻さん」
30歳も年の離れた人の後妻として入った若い妻。病気で亡くなった前妻の形見の着物を着て天神さんの縁日に行った日から、腕だけの前妻の幽霊が出るようになり・・・。
はじめは家事を手伝ってくれて、気の利くおとなしい幽霊に感謝するものの、だんだんと妻としての存在意義を見失い、忌々しく思うようになる。しまいには、「いっつも私がこの家のいちばんの存在やないといやや」と幽霊の拠り所であった形見の着物をズタズタに切り裂く若い妻。それでもまだ今度は顔だけになった前妻の霊が部屋に漂うと「いや、ひつこいわぁ」と吐き捨て、「この世では、今生きてるもんが偉いのや。おたくさんは死んではるのやから分はわきまえてもらわんと困ります」と言える妻の・・・怖さ。

他に「増殖」「虫籠窓」「正体見たり……」「安全地帯」の全6編。


そうなのです。この人の書く小説は何が怖いって、幽霊なんかよりもむしろ、生きている主人公だったりします。生きている人間の心がいちばん怖い。そして、そんな小説を流暢な京都弁の文体で“さらっと(簡単にという意味ではありません)”書いてしまう著者も恐ろしいです。


町田康の登場以来、どうも“えげつないほど勢いのある関西弁”がもてはやされていた時代がありましたが、
神狛しずさんの描く京都弁は、(まあ、今は使わないっていう方言も文中には点在しますが、それも含めて)新しい小説の世界観や文体を作っているようで、なんだか次回作にも期待が持てちゃいます。


あえて苦言をいうなら、「正体見たり……」で、大学生がそんな言葉は使わんだろうという、話し言葉の違和感でしょうか。会話で小難しい説明口調になっちゃうと、読んでいる人間は小説の世界から一瞬にして醒めてしまうんですよね・・・。



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