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ハリヨの夏

2010年10月08日 23:53

ハリヨの夏 監督・中村真夕 2006年

ハリヨの夏 DVD


この監督は、ほんとうにこの映画を撮りたかったの? と疑いたくなるほど“のっぺり”とした作品でした。
いや、もちろん、1990年の京都や、学生運動の時代や、反戦や、ハリヨや、別居する父親や・・・、脚本も手がけた監督の思い入れはそれぞれのワードにあるんでしょうけど、焦点が定まっていないのです。

監督のデビュー作で、女優も初主演作となると、荒削りであっても、ほとばしる瑞々しさを観る者は期待しちゃったりするのです・・・それが、たとえどんなテーマであろうともね。ただ、映像のキレイさはあっても、演技演出の輝きには、今ひとつ・・・かな。

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舞台は1990年の京都。
高校生の瑞穂(於保佐代子)は、母親(風吹ジュン)と妹(松本花奈)との3人暮らし。
別居中で予備校講師の父親(柄本明)とは定期的に会っていて、いつかは父親と4人での、元の暮らしに戻りたいと思っていた。

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ある日、父親からハリヨの稚魚をプレゼントされ、大切に育てる。ハリヨは1年という短い寿命の中で、オスが子どもを育てる珍しい魚だった。

母親の働く居酒屋で、影のあるアメリカ人チャーリー(キャメロン・スティール)と知り合う。
しかし、瑞穂は酒にルーズで奔放な性格の母親を認めることが出来ず、母親の友人であるチャーリーにも素直に接することが出来ない。

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彼はベトナム戦争で足を負傷し、今は京都の大学で英語を教えていた。妻とは離婚し、子どもはいるという。

一方、ボーイフレンドの翔(高良健吾)とは、一緒に帰ったり、泳ぎを教えてもらったりする仲だが、奥手の彼とはそれ以上の関係にはなれない。

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父親は約束していた自分の誕生日にも顔を出してくれず、それどころか、若い女性と暮らし、子どもが生まれることを知る。
孤独と苛立ちに耐えかねた瑞穂は、同じく寂しい境遇のチャーリーと関係を持つ。
やがて瑞穂はチャーリーの子を身ごもる。しかし、彼はその事実にうろたえ、子を堕ろすことしか頭にない。
結局、瑞穂は高校を中退し、子を生み、育てることを決意する。

今まで瑞穂が蔑んでいたはずの母親も、子育てには協力してくれて頼りにはなるが、やはり子の父親であるチャーリーと一緒に3人で住みたいと思う。

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大学に押しかけチャーリーに一緒になりたいと言うが、実は彼はまだ離婚していなかったのだ。
行き場をなくした瑞穂は父親の元に向かうが、父親は父親で新しい家族がいるから、とやんわり断られる。

瑞穂が家に帰ると、子育てを終えたオスのハリヨが死んでいた。
死骸を川に戻してやろうと赤ん坊と鴨川に向かった。しかし、足を滑らせ、赤ん坊もろとも川に流される。
泳げなかったはずの瑞穂は必死にもがき、生まれて初めて泳いで赤ん坊を助けことができた。

乳母車に子を乗せて鴨川縁を散歩していた瑞穂は、偶然、大学生になった翔と出会う。
「また泳ぎを習いたかったらいつでも連絡しろよ」という翔に、瑞穂は「私、一人で泳げるようになったで」と微笑んで歩いて行く。

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たぶん最後の、「私、一人で泳げるようになったで」というセリフで、バシッと映画の最後を決めたかったんでしょうが・・・、それが少し作為的に見えてしまいました。
劇中を通して、登場人物の行動がシナリオ通りに淡々と動かされているだけで、そこには“情念”や“意志”がみあたらなく、リアルさが欠けているところに原因があるのです。
たとえば、複雑な境遇のせいで心を閉ざしがちで、気むずかしい主人公であっても、
その閉ざされた心の裡や、気むずかしさの裏には“心の揺れ”ってものがあるはずで、
でも、その“揺れ”さえも観ている人間に見せない(見せられない)っていうのは、あまりに他者の目を意識しなさ過ぎっていうか、サービスに欠けているっていうか。
それでは、観ている者が作品に感情移入すら出来ないのです。
どんなクリエイティブなものでも、最後はすべて制作者の“情熱”。熱意さえあれば自ずと伝えたい一番大切なことに焦点は合ってくるはずで・・・。

そして、映画の流れにしても・・・だらしのない母がいて、若い女性と暮らす父、優柔不断なボーイフレンド、友人の娘に手を出すアメリカ人、挙げ句の果てには主役の妊娠・・・いかにも、なんです。
妊娠させるアメリカ人がベトナム戦争で負傷したのも、湾岸戦争のエピソードも、映画の流れを邪魔するだけだと思うんですけど。必然性がないというか、散らかしてしまっただけというか。

主演の於保佐代子って女優さんは、何か独特の存在感を持っていそうなんですけど、この映画ではまるで生かし切れていないです。

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そして、ひとりで“青春役”を背負わされた同級生役の高良健吾くんは、少女の自立を象徴づけるための道化役のようで可哀想すぎます(笑)。この役者さんもいい雰囲気を持っていると思うんですけど・・・。


監督の中村真夕さんは、詩人・正津勉氏の娘だとか。
経歴を見ると、若くから海外に留学し、ロンドン大学、コロンビア大学大学院、ニューヨーク大学大学院映画科修了、・・・すごいんです。
なまじっか頭がよすぎるだけに、頭でっかちに考えすぎて作っちゃったのかもしれませんね。まあ、次回作に期待ってことで・・・。

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しかし、ほんやら洞は相変わらず散らかってますねえ(笑)。



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