女の坂

2020年09月15日 21:58

女の坂 監督・吉村公三郎 1960年 松竹


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原作は澤野久雄の小説「五条坂」「愛する権利」。脚本・新藤兼人、監督・吉村公三郎。

「戦後」という言葉も世相も一息ついた1960年。主演の岡田茉莉子が仕事に生きる新たな日本の女性像を演じた一作。
バンダナをまき、赤いVネックのニットに、細身のパンツルックで商用車を運転。ハツラツとした若き女性像を演じる姿は健康的で素晴らしく、この作品は岡田茉莉子の存在あってのもの。

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ただ、残念なのは相手役の佐田啓二。戦前の因習めいた日本の古臭さや、闊達な主人公と対比して、うだつの上がらぬ男像を彼に背負わせていたのなら、演出としての理解もできます。しかし、この役柄の岡田茉莉子を惚れさせる相手としては、優柔不断で、陰気で、あまりに役不足。

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なお、作品としては1960年の美しい京都の街並みを、過剰にではなく自然に見せている点も好印象です。

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あらすじ・・・

元禄時代から続く京都の老舗菓子店「鍵村」では当主が亡くなり、親族でもある若い津川明恵(岡田茉莉子)が相続人として箱根湯本からやってきた。
明恵は当初、京都への都落ちをしぶり、古い暖簾を降ろして洋裁店を開く予定だった。
しかし、古くから鍵村で働いていた谷次(富本民平)が銘菓・京時雨(くずきり)をつくる美しい所作に感動。鍵村の再興を決意する。

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女主人自らが商用車を運転して営業し、次第に店は盛況に。

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商売も軌道に乗ってきたある日、明恵の母・恵子(乙羽信子)が箱根からやってきた。母が伴ってきたのは、かつての母の恋人でもある版画家の矢追三郎(佐田啓二)だった。
舞妓のスケッチをするために京都にやってきた矢追を、鍵村に泊めてやることになる。

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「今のあたしは、恋愛より仕事どす」と友人に語っていた明恵も、結婚で幸せを実感する千穂(高千穂ひづる)や、叶わぬ恋に失望して心中してしまった由美(河内桃子)といった友人の存在もあって、次第に妻も子もある矢追に惹かれ、仕事と恋愛とのあいだで揺れ動く。

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奈良へ仏像スケッチに行った矢追を追いかけるほどに、彼への思いが抑えられなくなった明恵は、東京に住む矢追の妻の元へ向かう。しかし、裏庭に干されていた子どもの洗濯物を見て、京都に舞い戻り、仕事に生きる決心をする。

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矢追の妻に会わずに京都に戻ってきた明恵は、由美の兄が経営する小さなバーで友人の千穂に告白するのです。
「あたしね、本当に奥さんと話し合おうと思って東京に行ったんです。門の前まではそんな気持ちだったけど、裏庭でひらひらとしている洗濯物を見ているとき、なんだか急にそういう気持ちが崩れてしまった。センチなのかしら・・・。センチでもなんでもいいわ。とにかく風船玉がはじけてしまったようになってしまったんですもの。洗濯物って、えらい力持ってるもんやなあ・・・あたし、由美ちゃんみたいに自殺なんかしない。せやけど弱いことあらへん。うち、仕事するねん。お菓子一生懸命つくったる」と。

「洗濯物って、えらい力持ってるもんやなあ」の、言葉の重さと深さと言ったら・・・。


南禅寺や金戒光明寺を歩きながら語らい、矢追へ別れを告げ、鍵村に帰ってきた明恵。店員に「なにしてんの、あんたら。今日は公休と違いまっせ。これ、祇園さん納めるお菓子でしょ。はよ、積まなあかんやないの。はよ! あたしが運転するからね」とはっぱをかけて、急いでいつものパンツルックに着替え、さっそうと車を運転して祇園へと配達に向かう。格好よすぎです。

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