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呪いの壺

2010年09月29日 23:39

怪奇大作戦 第23話「呪いの壺」 1969年

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今回と次回はお待ちかね、怪奇大作戦“京都シリーズ”(実相寺昭雄監督)の紹介です!


そもそも、「怪奇大作戦」は、「ウルトラ」シリーズで知られる円谷プロが、「ウルトラセブン」の後番組として1968年9月から半年にわたり放送した空想科学特撮ドラマ(全26話、TBS系列で日曜午後7時からの30分番組)で、
科学捜査研究所(SRI)のメンバーが、警察でも手に負えない数々の猟奇犯罪や科学犯罪の謎を追うというストーリー。
人間の闇や高度経済成長期の社会の歪みに焦点を当てた意欲作と見て取ることも出来ます(荒唐無稽とは言わないでください・・・)。

SRIのメンバーは微妙に地味です(笑)。でも地味だからこそ、この世界観が表現できうるんですっ!
防衛大出身の肉体派にして行動派・三沢京助には、勝呂誉。
SRIのエースでいつも冷静沈着な理論派・牧史郎に、岸田森。
元警視庁鑑識課長にしてSRIの設立者でもある所長・的矢忠に、原保美。
若手で少しおっちょこちょいな野村洋に、松山省二(のちの松山政路)。
紅一点で学校を出たばかりの秘書・小川さおりに、小橋玲子。
そして、SRIと警察との橋渡し役、警視庁捜査第一課長の町田警部に、小林昭二。



さて、「呪いの壺」です。

京都で奇怪な事件が発生した。壺を鑑賞中の老人5名が、時と場所を異にして次々と怪死を遂げたのだ。
すべての被害者の神経腺は赤く変色し、特に視神経は完全に破壊されていた。

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〈視神経が破壊される瞬間!です〉

警察の要請で、京都に急行したSRIの一行は、投宿先の旅館前で肺を病む日野統三(花ノ本寿)という青年に声を掛けられる。

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〈日野統三役の花ノ本寿。この回ではSRIから主役を奪うほどの存在感を発揮します〉

被害者たちは全員、統三の勤める古物商・市井商会の得意先であった。「気にかかって仕方がない」とSRIを訪ねてきたのだ。
翌日、市井商会を訪問したSRIメンバーの目に、統三と主人・市井(北村英三)との確執が映る。
SRIが訪問している最中にも、得意先の老人が亡くなったことが市井の娘・信子(松川純子)から知らされる。
統三は実家に少し帰ってくると市井に告げる。
「こんな忙しい時に」「忙しいのは事件の方で商売には関係ないでっしゃろ」と言うと、市井の了承も聞かぬまま自室に籠もる。
信子は父親と統三の不仲、そして今回の事件が気がかりで、統三を問い詰める。信子と統三は恋仲にあった。

呪いの壺000010 〈西本願寺門前を歩く統三〉

「いっしょにおいで、それがええ、それがいちばんええことや」と、統三は意味ありげに言い、信子を伴い汽車で帰郷する。SRIに尾行されていることを承知で。

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〈統三と信子を尾行するSRIの三沢と野村。もはや尾行ではなく同行の距離です・・・〉

統三の実家では、父親(浮田左武郎)が出迎え、信子がついてきたことに驚く。
日野家は祖父の代から、市井家のために唐や宋時代の贋壺を作らされていたのだった。
腕のいい陶芸家である父が贋作を作られていることに我慢のならない統三。
会心作が出来上がっても、父親の名とは関係なく金持ちに買われ飾られることが口惜しいのだ。
しかし、市井家への義理から父はやめようとはしない。

信子とふたりきりになった統三は真意を語る。
「それというのもあんたと一緒になって、贋物をどんどんはびこらすんや。成金どもを心の底から嗤うてやりたかったからや!」

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しかし、統三の思惑とは裏腹に、贋物はいつまで経ってもばれず、むしろ珍しい真作として保証され出す始末。
肺を病み、余命幾ばくもない統三は、そんな家や父親の理不尽さから、市井家に復讐する決意をすでにしていたのだ。
市井商会から壺を買った金持ちが死に、まもなく市井家もつぶれる。統三の陶酔の瞬間が迫っていた。

信子が見守る中、統三は山中で土を掘っている。その姿をSRIの三沢と野村が不審そうに眺める。

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〈三沢と野村も、見つかろうが見つかるまいが、もうどうでもよくなっているようです・・・。しかし彼らの能力を疑ってはいけません〉

統三が掘っていた砂、それこそが、老人たちの死の原因“リュート物質”だったのだ。
“リュート物質”とは、太陽光に刺激されるとリュート線を放出し、真っ先に目をやられてしまうという恐ろしい物質だ。

京都に帰り、市井に贋作を白状させたSRIが次に向かったのは統三の元。
蔵に潜む統三を見つけるが、“リュート物質”を手に、統三は逃げる。「これで僕も犬死にしないですむ」と。

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長唄の聞こえる町なかを走り、統三の逃げ込んだ先は、古寺。
「これでええんや、これで思い通り・・・。この寺は、本物か、贋物か・・・、ワシの道連れやで!」

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〈もはやセリフが理解不能です・・・〉

そう叫ぶと、統三は大きく咳き込む。すると“リュート物質”の黒い粒子が舞い上がり、堂宇を覆い、古寺の伽藍は一瞬にして業火に包まれた。

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〈実在の門と焼け落ちるミニチュアの伽藍の合成、さすがです〉

統三が“リュート物質”を掘り出していたのは、旧陸軍の秘密研究所があったところ。「戦争のたびに科学が進歩する、か」所長の的矢が呟く。
統三の父は自ら作った壺をたたき割る。「ちくしょー、ちくしょー」と叫びながら。

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まだ、TBS社員だった頃の実相寺昭雄が監督をつとめています。脚本は石堂淑朗。
そもそも、これだけの内容を30分(実質20数分でしょう)に詰め込むのですから、話の展開には無理があります(笑)。
ある程度の、いや、かなりの思考の飛躍はこの際問わないこととしましょう。

もちろん“リュート物質”とはなんぞや!なんて考えてはいけません。ググってもいけません。
なぜなら、「リュート物質」と「怪奇大作戦」の無限ループに陥るだけだからです(笑)。


誰もが納得する、この作品の圧巻は最後の寺の焼失シーンでしょう!

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美術担当・池谷仙克氏のこだわりが結実したシーンだったようです。
1/6縮尺のミニチュアをつくり、ガソリンを仕込み、3台のカメラによる撮影だそうですが、瓦の落ち方、炎の走り方、屋根の崩れ方、すべてがリアルすぎますっ!
ウルトラマンやセブンのミニチュアは1/20か、大きくても1/10だったとか。火や水は小さくならないので大きく作ろうと、当初は1/4で計画されていたが、予算の都合で1/6になったとか。
モデルは上京区寺之内にある日蓮宗本山・妙顯寺。あまりのリアルさに、放映当時、自分のお寺が燃えていると檀家が慌てたといい、
また、お寺を燃やすとは何事かと、テレビ局に苦情の電話が鳴ったとも・・・。



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京都買います

2010年09月30日 00:40

怪奇大作戦 第25話「京都買います」 1969年

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なにがって、もう、タイトルにやられちゃいます! 「京都買います」ですよっ、「京都買います」!
「呪いの壺」に引き続き監督は実相寺昭雄。脚本は佐々木守。とにかく岸田森の演技と存在感に注目です。



京都で仏像が忽然と消失する怪事件が発生していた。
しかも消失した仏像はどれも考古学の権威・藤森教授(岩田直二)が研究していたものばかりだった。SRIの牧史郎(岸田森)は教授の研究室を訪ねる。

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しかし、重大事件であるにもかかわらず、教授から出てきた言葉は「ざんねやと思う一方、ほっとしております」という意外なものであった。
仏像が安心して住める町でなくなりつつある京都の変わり様を嘆いているのだ。
いつも怜悧な牧であったが、研究室助手の須藤美弥子(斎藤チヤ子)を見て、心惹かれるものがあった。

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美弥子はかいがいしく、愛おしむように仏像に接していた。


SRIの助手・小川さおり(小橋玲子)にゴーゴー喫茶へと連れてこられた牧。
「踊ろう」というさおりをよそに、騒々しさに耐えきれず外に出ようとする。その時、美弥子の姿を見かけた。

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美弥子は踊る若者たちに「ねえ、あなた、京都の町を売らない?」と尋ねているのだった。
若者たちは深く考えず、美弥子の差し出す“契約書”にサインする。
その紙には「京都市民として、京都に現存する歴史的文化財に関する一切の権利を譲渡すことを約束します」と記してあった。
美弥子に詰め寄る牧。「誰も京都なんか愛してないって証拠です」そう言って雲水の列をかき分け消えていく。

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美弥子を探し出した牧に、
「買ってしまいたいんです。仏像の美しさのわからない人たちから、京の都を・・・。仏像のよさのわかる人たちだけの都をつくりたい」そう語る美弥子。
その意図を理解できない牧に、さらに語る。「仏像は私だけのもの、そう思いたいからです」と。

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見晴らしのいい山門で、牧は精一杯の言葉を発する。
「僕は仏像より、現実に生きた人間の方が好きかもしれない・・・」もちろん、それは美弥子のことであった。
文の助茶屋で、「たまにはこんなところに来るのもいいものでしょう?」と問う牧に、「生きている男の方とお話しするのも悪くない・・・今はそう思ってますわ」と答える美弥子。ふたりのつかの間の休息であった。

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また消失事件が発生した。
現場に来た牧に、雲水の鳴らす錫杖の音が聞こえる。自然と美弥子のことを思い出す。
現場に不審な器具が見つかった。物質を電送するという“カドミウム光線”と関係があるかもしれない・・・。
牧にはなんとなく美弥子の仕業だと言うことがわかっていた。

「昨日の夜、また一つ仏像が消えた。あれはどういう訳なんです?」

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美弥子は「知りません・・・何も・・・さようなら」と走って逃げるが、牧につかまり見つめられると、とうとう白状してしまう。
「許してください、私は仏像を愛してしまった女なんです」そう言い残し、歩き去る。牧ももう追いかけようとはしない。

SRIがくつろぐ旅館の一室。牧以外のメンバーには、まだ美弥子が犯人だという確証はない。
一方、カドミウム光線は物質をその構成分子に分解し、電送するものであるということがわかる。

美弥子を尾行し続けていた牧は、法性寺で美弥子が装置をつけるところを目撃する。柱には例のカドミウム光線を出す発信器があった。


ある寺の一室で、読経が鳴り響く中、藤森教授と、美弥子、そして僧の集団がいる。
消失したはずの仏像たちが並べられ、仏像の前には、京都市民が署名した契約書の山があった。

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「いくら冗談やゆうても、こんだけ仰山の人たちがこの町のもつ文化に関心がない」無念そうな藤森教授。
「先生作りましょう。一日も早く、この仏像たちの町を・・・」美弥子の目には涙が光る。

そこへ、ついに受信地を突き止めた、警察とSRIの一団が立ち入る。
国宝消失事件の犯人として藤森教授は、なすすべなく連行される。
「牧さん、あなた・・・」集団の後ろに隠れるように立っていた牧を認めた美弥子。その視線が牧にはつらい。

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牧に追い打ちをかけるように美弥子は呟く。
「仏像以外のものを信じようとした・・・私が間違ってた・・・それだけのことです」
暗闇へと美弥子は姿を消す。


京の町、京の寺を彷徨う牧。美弥子の面影をさがすように。

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人のいないある古びた寺で、地面を掃く尼僧に声を掛ける。
振り向くと、それは美弥子だった。

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「美弥子さん・・・」
「須藤美弥子は一生仏像とともに暮らすとお伝えしてくれとのことでした・・・」
うなだれる牧。
「きっとそのほうがお幸せだと思います。どうぞあなた様も、お忘れになってくださいませ」
諦めて帰ろうとする牧が振り返ると、美弥子は仏像になっていた・・・。

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震える牧は、コートを頭から被り、その場から走り去った。



もう、上質の散文詩を映像で見ているようです・・・。
そして岸田森の演技は神経質そうで、それでいてナイーブで・・・、個性派俳優と呼ばれるに相応しい真骨頂ですっ!!
もちろん、“カドミウム光線”もすんなりと受け入れられましたね(笑)。

でもね、最後のシーン、仏像に箒を持たせるって、一体・・・?
まあ、牧さんにはそう見えちゃったんだから仕方ないか(笑)。



岸田森はもともと文学座の出身。創設者の一人でもある岸田國士の甥という関係もあったのでしょう。
それまで舞台を主戦場としていた彼が、テレビへと本格的に進出したのは、「氷点」(1966年)での辻口徹役。たいへんな高視聴率ドラマで、この時、世間には役者として認知されたようです。

そしてこの「怪奇大作戦」(1968年)で、役者人生に大きな影響を与える円谷プロと出会うのです。よほど肌に合っていたのでしょう。
新劇出身にもかかわらず、この作品以降、自ら「僕は円谷育ち」と公言するくらいなのですから。
惜しむらくは、1982年に43歳の若さでなくなってしまったこと。演出家としての才能をも秘めていただけに、今のつまらないドラマ界をどう思っているのでしょう。


同じく「円谷プロはわたしの故山」と語る実相寺昭雄監督。監督として、ウルトラマン作品からATG作品へと移り変わる際の、“紀元零年”的な作品が「呪いの壺」と「京都買います」ではなかったでしょうか。
「京都買います」では、主な寺院ロケを金戒光明寺で行っていますが、それでも、広隆寺、仁和寺、平等院、東福寺、知恩院、銀閣寺、化野念仏寺、万福寺、光悦寺、源光庵、二尊院、祗王寺、常寂光寺・・・と30分番組には贅沢なほど京都の寺社でロケを行っています。
並の作品なら、むしろその行動範囲が違和感となってしまうのですが、そんな違和感をも凌駕する圧倒的な叙情的芸術作品にしてしまいました。


こうしてみると円谷プロの功績は偉大ですね。
特撮があたかも、子ども向けだけのものと思っている人がいるとしたら、人生をいくらか損をしています。


現在、「怪奇大作戦」はデジタルウルトラシリーズ(全6巻)としてDVDで見ることができます(ただし、第24話の「狂鬼人間」は未収録です。大人の事情・・・差別用語の為でしょうか・・・)。

怪奇大作戦DVD_20100929162609
〈「呪いの壺」と「京都買います」はVo6に収録〉





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