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活動寫眞の女

2010年09月29日 00:03

活動寫眞の女 浅田次郎 1997年 双葉社

活動寫眞の女_20100928235218


浅田次郎の小説って、これしか読んだことがありません。まあ、食わず嫌いとでもいいましょうか・・・。
じゃあ、どうして『活動寫眞の女』を読んだのかといえば、たまたま、原作のドラマ(全6回、NHKドラマ館、1999年放送)を見たからなのでした。
そのドラマも途中から見た断片の記憶しかないのですが・・・、妙にこの物語が引っかかったのです。


30年も前に自殺したはずの美しい大部屋女優・伏見夕霞。映画に恋をし死にきれなかった夕霞の魂が時を越えて、映画好きの孤独な学生・清家忠昭と危うい恋をする物語。現代版の牡丹灯籠とでも言いましょうか・・・。


昭和44(1968)年、学園紛争のあおりを受け、東大の受験が出来ず京都大学に入学した主人公・三谷薫。彼は、排他的な京都の空気に馴染めずにいた。
そんな折、四条河原町にちかい古い映画館で一人の男子学生と知り合う。それが清家忠昭だった。
清家は高校を中退し、大検を受け京都大学医学部に入った秀才で、映画好きの三谷は彼から太秦の撮影所でのアルバイトを紹介される。
清家らとともに入ったエキストラのバイトで見かけた美しい女優・伏見夕霞。
しかし、夕霞は30年前に撮影所で首をくくり自殺した大部屋女優だったのだ。
夕霞に魅せられ、恋をしてはならない相手に恋をしてしまった淋しい孤高の秀才・清家。
そして、清家を心配し見守る三谷も、恋人・早苗と、斜陽となった映画業界への未練と、息子に東大に入り直してほしいと思う両親との間で、大きく心は揺れ動く・・・。


それにしても浅田次郎の筆の強さなのでしょうか? あたかも伏見夕霞という女優が、過去に実在したかのような錯覚にさせるのです。
夕霞は、日本映画の父・マキノ省三に見いだされ、22歳の若さで日本映画界の巨匠と呼ばれた山中貞雄と恋仲になるも、あまりの美しさに、主役を凌ぎかねないとセリフも与えられない不幸な大部屋女優。
(こういう設定は、日本映画の熱狂的ファンがみれば、怒っちゃうかもしれませんね)
そして、戦地である中国の病院で山中貞雄が亡くなった昭和13(1938)年9月17日、奇しくも同じ日に撮影所で自殺してしまいます。


伏見夕霞という架空の女優を中心に、マキノ省三や山中貞雄、溝口健二ら巨匠を巻き込んだパラレルワールドが見事に出来あがっていますが、
それとともに日本映画の黄昏、そして活動屋の悲哀がうまく描き出され、太秦の日本映画史に少しでも興味のある人は、おもしろく読めるんじゃないでしょうか。


物語の最後は、江戸川乱歩の「押絵と旅する男」を想起させる終わり方ですが、まあ、このあたりは想定内というところでしょう。



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