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雪華葬刺し

2011年06月28日 22:19

雪華葬刺し 監督・高林陽一 1982年


『雪華葬刺し(せっかとむらいざし)』の原作は、赤江瀑の同名短編小説。脚本は桂千穂が担当しています。

この作品は・・・、

『IREZUMI』の題名で、カンヌ映画祭監督週間に出品され、
京本政樹の映画デビュー作(彼の出世作となる「必殺仕事人Ⅴ」に出演する3年前)で、
最後の大映京都撮影所作品。
(1971年の大映本体の倒産を受け徳間書店が出資し再建される途上で、撮影所が「大映映画京都撮影所」として分社化。名門“大映”の名を引き継ぎ1986年の完全閉鎖まで、主に貸スタジオとして稼働していました。そんな中での最後の制作作品となったのです)

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〈「株式会社大映映画京都撮影所」のタイトルロゴ〉

・・・と紹介されがちな映画ですが、耽美主義映画の傑作といっても過言ではない作品です。


赤江瀑の原作は未見ですが、いかにもな赤江瀑ワールドが劇中では炸裂。おそらく脚本家の桂千穂の力量とも合わさり、監督・高林陽一の(どこか陰湿で、やはりチープ感漂う)映像美が、題材にピッタリとはまっているのです。


ただし、完全に成人映画の範疇にありますので、詳しくは紹介しません(苦笑)。あしからず・・・。


描かれているのは、刺青に魅せられた男の因業と、そんな男の虜になった女の宿命。

しかも刺青に魅せられた男を愛したのが、東京の図書館に勤める堅実な女性で、愛する上司のために腕は日本一といわれる京都の彫り師を訪ねるのですから。
女の背中に彫られるのは、歌川国芳の『本朝武者鏡 橋姫』。そしてその彫り方が・・・。よくもまあ、赤江瀑はこんなことを思いつきますネ。


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図書館に勤める茜(宇津宮雅代)には密かに付き合う上司の藤江田(滝田裕介)がいますが、刺青に尋常でない執着を持つ彼には、見事な「騎龍観音」が彫られた背中を持つ熟女の情婦がいて・・・。

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バーのママは仮の姿。女刺青師の春菜(白石奈緒美)が藤江田の愛人です。結婚を決めている恋人と情婦を引き合わせる男の倒錯した性癖・・・。
愛人への対抗心と、藤江田の執拗な懇願から、茜は自らも刺青を背負うことを決意するのです。

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伝説の彫り師「彫経」こと経五郎(若山富三郎)。彫り師の世界から足を洗い、友禅染の下絵を描くことを生業としていた彼の元に、美しい肌を持った茜が現れたことから、もう一度彫ることを決意します。経五郎も女の肌と刺青に魅入られた人物で、かつて妻の背中に無理矢理刺青を入れ、その非道い仕打ちの末に妻は逃げ・・・。

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経五郎の内弟子が春経(京本政樹)。彫り師だった母親に水滸伝の豪傑・史進の刺青を背中に彫られ、前面に入れられるのは京都にいる経五郎だけという母親の言葉を頼りに17歳で入門してくるのですが・・・。もう、さすがに因果関係はおわかりですネ(苦笑)。

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『雪華圖説』という天保年間に作られた雪の結晶の観察書を手に経五郎の元に弟子入りしてきた春経。『雪華圖説』は、二冊揃いの書物で、この本を母親は一巻だけ理不尽だった夫の元から持ち出してきたという設定(という名のわかりやすすぎる伏線です)。
もちろん、この後、もう一冊の続編を蔵の中に見つけてしまって・・・、ってその前に気づけ~。


タイトルの『雪華葬刺し』の「雪華」は春経が茜の脇に施した雪の結晶の隠し彫りのこと。
「葬刺し」とは(全くの赤江瀑の造語でしょうが)、茜に施した経五郎の彫り物に最後の一針を入れるのをとどめておいて、彼が死んだ後、経五郎の亡骸の前で刺して刺青を完成させることによって、彼にあの世への引導を渡すという行為のことです。
余命を悟っていた経五郎にそのことを約束していた茜は、彼が亡くなった知らせを聞き、五年ぶりで京都に向かいます。密かに慕っていた春経に「葬刺し」を行われると思っていたところ、春経はすでに亡くなっていて(自分の本当の父親を知った彼は怒り狂い、庭先で自害したのです)、
経五郎の養女である勝子(京春上)に「葬刺し」をしてもらい、京都をあとにするのでした。

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それほど京都の名所は表立って出てきませんが、劇中に挟み込まれる甍の町並みや、町屋を陰湿な独特の高林タッチで挟みこむ手法は、幻想的な世界観をより深め、京都の密やかな空気をアリアリと表現しているところは、さすが高林陽一、といったところでしょうか。

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