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狂った野獣 その1

2011年06月01日 00:46

狂った野獣 監督・中島貞夫 1976年

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とにかくこの映画を、「サイコー!」と言わずして、どんな映画を評価すればいいのでしょう。ってくらいの映画です。
先に紹介した『尼寺(秘)物語』なんて、中島貞夫の力量からすれば“寝ぼけまなこ”で撮影した凡作でしかありません。
中島貞夫の本領は『序の舞』(1984年)などの文芸大作の中には見あたらないのです。


やはりこの人はヤクザ映画、そしてアクション、なかでもこの『狂った野獣』・・・もうホント、サイコー!なのです。


二人の銀行強盗に乗っ取られた路線バス。劇中では京都の街をほぼノンストップで暴走するのですが・・・。
もちろん単なるパニックムービーでも、サスペンスでもありません。
銀行強盗のひとりが片桐竜次なのは納得として、もうひとりが何せ、川谷拓三なのですから。

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しかも、バスの後部座席に座っている乗客は・・・渡瀬恒彦!!

東映のピラニア軍団総出演ともいえる俳優陣も、当時の渡瀬恒彦の前では盛り立て役でしかありません。
ところが、渡瀬恒彦がただのメインキャストであったなら、ここまでこの映画を褒めることはないわけで・・・。
バスの中には12名の人質がいて、その人たちのアクの強いこと(笑)。
そして追いかけるはずの警察がマトモであるはずもなく、とくに白バイ隊員の室田日出男の執念といったら・・・(呆)。


それでは、完全ネタバレあらすじ、です。
それぞれの配役に役名はありますが、あまり意味はありませんので、役者名で表記しております。


銀行強盗に失敗し(苦笑)、通りかかった路線バスに乗り込んだ片桐竜次と川谷拓三。

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運転手を脅して、ノンストップで走らせますが・・・この運転手、心筋梗塞の病気持ち。これが、二人にとって第一の運の尽きでした(苦笑)。


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〈二人が乗っ取ったのは「京洛バス」(架空のバス会社)の大覚寺から京都駅へと向かう路線バス〉

乗客は・・・、
犬をこっそりと連れ動物病院に向かう途中の荒木雅子。
役をもらって急いで京都駅に向かう駆け出しの女優・橘真紀。
不倫関係にある小学校教師の野口貴史と生徒の母親・三浦徳子。
少々ボケ気味の老人・野村鬼笑。
ラジオで競馬中継を聞き続ける松本泰郎。
パーマのカラーをつけたまま風呂へと向かうホステス・中川三穂子。
チンドン屋の丸平峰子と畑中伶一、そして志賀勝。

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そのほかに野球帽をかぶり、塾に向かう途中の小学生が二人。

それにしても、ピラニア軍団ばっかりだ・・・。


そして、後部座席で新聞を読んでいたのが、渡瀬恒彦。
渡瀬の手には大きな黒い楽器ケースが・・・。
彼はもともと自動車会社の開発テストドライバーで、目の病を患い事故を起こして、お払い箱に。
そして同僚であった若い女性・星野じゅんが彼を追って会社を辞め、二人して大阪の宝石店で8500万円相当の宝飾品を強奪し、別々に逃走していたのでした。
京都駅で落ち合う道中で、とんだバスジャックに遭遇してしまったのです。

大事に抱えた楽器ケースには強奪した宝石が詰め込まれていたのでした。

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次第にパニックになる乗客たち。川谷拓三がお得意の「ぶち殺したる!」を連発すると一時は静まるものの、「降ろしてえなあ、堪忍してえなあ・・・オニ! 人でなし!!」とおばちゃんにすごまれると、シュンとしてしまう人の好い拓ボン。

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おばちゃん役の荒木雅子の「ええ若いもんが、ただボケッと座ってんと、何とかしたらどうやのんな! あんたらそれでも男か! チンチンつけとんのか!!」の言葉に発奮したのか、競馬中継に夢中になっていた松本泰郎が拓ボンに襲いかかります。

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そこに渡瀬恒彦も加勢するものの、松本が足を片桐竜次に刺されると、またしてもバスの車中は沈静化。


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〈ラジオの生放送中にバスジャックのニュースを伝えるのは笑福亭鶴瓶。まだアフロだった頃!〉

小学生の二人は唯一のノーマルな乗客だと思いきや、その親が濃かった・・・。
バスジャックを知った小学生の親は、松井康子(ピンク映画草創期の女優さんです)。子どもを心配して、パックをつけたまま警察署に駆けつけます(笑)。

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狂った野獣 その2

2011年06月01日 00:46

車内では、だんだん心細くなってきた表情の拓ボンとは反対に、乗客同士のエゴや確執が浮き彫りになってきました。

不倫カップルは、関係がばれることを恐れ次第に罵り合い・・・、飼い犬を邪険に扱われたおばちゃんはホステスに掴みかかり・・・、老人はバスジャックも意に介さず、バナナを食べ始め・・・、チンドン屋は演奏を始めてしまいます。

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その頃、京都駅で渡瀬恒彦を待っていた星野じゅんは、ニュースでようやく事件に彼が巻き込まれたことを悟り、警察署に急行。

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しかし手がかりをつかめず、駐車してあったバイクを盗んで、バスの行方を捜します。

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〈この、新人女優の星野じゅんは、セリフは下手なのに、バイクの運転はやけに上手い! というか、このバイクの運転技術を見込んだ起用だったようです〉

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〈捜査の指揮を執るのは、岩尾正隆〉


なぜか、ここに来てナンバープレートを取り替えるためにバスが停車。片桐竜次がプレートを付け替え戻ってきた隙を見て、渡瀬が逃げますが・・・扉に楽器ケースだけが引っかかり、渡瀬を振り切ってバスは発車!

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さて、ここからが怒濤の展開の始まりです!!


それまでは、バスの後部座席で一人余裕にふんぞり返っていた渡瀬さん。しかし宝石の入ったケースが車内に残されているとあっては、格好をつけている場合ではありません。

走って、追いかけて、見つけたのは・・・酒屋の自転車。

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そして、中島貞夫監督の悪意ある演出でもあるかのように、街中をバイクで華麗に疾走する星野じゅんの映像と、酒屋のチャリをカシャカシャいわせながら顔を歪ませバスを必死に追いかける渡瀬さんの姿が交互に繰り返され・・・渡瀬さん哀れ(苦笑)。


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〈回想シーンとして、会社を辞めたばかりの渡瀬と星野がライブハウスで強盗を思いつく場面では、フォーク歌手の三上寛が熱唱中。三上寛は『仁義なき戦い』にも出演するなど、東映とは浅からぬ関係で、『狂った野獣』の公開翌年、その名もズバリ『ピラニア軍団』という軍団総出演のLPレコードを中島貞夫と共同プロデュースしているのです〉


ようやく渡瀬と星野が合流!
そして、スタントマンなしの渡瀬恒彦の男気あふれるアクションの始まり~。
バイクの後部座席から、再びバスにイン~。

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その姿に、拓ボンがキョトンとするのも、もっともです。

さて、渡瀬さんはケースを持って降りようとしますが、今度は強盗との取っ組み合いでケースが開き、宝石が散乱!

乗客たちは口を開けて、渡瀬さんを呆然と見ています。そう、乗客のみんなが渡瀬さんを、世間を騒がせた宝石強盗だと悟ったのでした。

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と、ここでタイミング良くというか、悪くというか、運転手に心筋梗塞という爆弾が発生(結局、亡くなられたようです(泣))。
ハンドルを握りながら片桐竜次が「助けてくれ~!」と叫び、バスは蛇行しながら暴走。その間に、警察車両に追いつかれてしまいました。


ここで主客逆転です。ようやく渡瀬さんがバスのハンドルを握って、警察を振り切ります。事故以来、もう二度とハンドルは握らないと自分自身に誓っていた渡瀬さんなのに・・・。
拓ボンも片桐も、もはや渡瀬さんの舎弟と化してしまいました。


ただここでバスの後ろに執拗にしがみついている白バイ隊員が・・・その男は・・・室田日出男でした(笑)。

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暴走バスはなぜか東映の撮影所の中を突き抜け(完全な制作者の悪ふざけです)・・・パトカーも白バイもなぎ倒し・・・、それでも食らいつく室田日出男。

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バスはどうやら空き地らしい場所に入り、その先には不自然な建物が・・・。

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もうおわかりでしょう、「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」の10年以上も前に、この光景が見られたとは!

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しかし脱落者がひとり・・・そう、室田さんです。
でも室田さん諦めません! 不自然にそこにあったミニバイクにまたがり執念でバスを追いかけます。ガンバレ室田!!

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車内では泣き叫ぶ乗客たち。拓ボンもやけくそになって歌を歌い出す始末で、チンドン屋も巻紙に遺書を書き出し・・・「父ちゃん、なんで生命保険入ってくれなかったのよ!」と。

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執念でバスの先回りをした室田日出男。

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最後の力を振り絞り、バスに飛び乗ろうと歩道橋の上で待ち構えます。
そして、タイミングを見計らって渾身のダイブーー! 

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も、あえなく不発・・・室田日出男の出番もTHE ENDなのでした。

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狂った野獣 その3

2011年06月01日 00:47

すでに、車内もパニックを通り越して、意気消沈です(笑)。
新人女優役の橘真紀はせっかくもらった配役がおジャンになった失望と、バスの暴走による恐怖から頭がおかしくなってバスの中に放り出されていた鶏の羽をむしり出しました(苦笑)。

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川谷拓三は「止めてくれ~。頼むき。このままやとみんな死んでしまう。みんな助けたってくれ!」と当初の立場を忘れてしまった発言。しかしもう主導権は渡瀬恒彦にあるのです。

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次第に、目がかすみ出す渡瀬さん。しかしバスはまだまだ走り、気がつけば琵琶湖大橋が見えてきました。
そして、琵琶湖の湖畔で追いかけてきた星野じゅんも加わり最後の大カーチェースです。

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バスがついに横転し、これで渡瀬も片桐も拓ボンも一巻の終わり・・・と思いきや、そうではないようです。

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投降を呼びかける警察に向かって渡瀬さんがバスのマイクで話します。「警察の皆さん、私は乗客の代表だ。この人たちの要求を聞いてやってくれ。犯人たちは気が立ってる。爆発物も持ってる。このままでは乗客全員の命が危ない。ヘリを一台用意してくれ。警察は我々、善良な市民がどうなってもいいのか」って・・・。

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悪だ・・・ホンモノの悪だ・・・。渡瀬さん、怖い・・・。

警察は、渡瀬の言葉に従い、上空にいる報道陣のヘリを降下させます。
その間に、乗客たちに車内に散らばった宝石を拾わせる渡瀬さん。
しかし、乗客は拾っている振りをして宝石を・・・ポケットに、カツラの中に、パンツにねじ込んでいます(笑)。

自分が人質役となって、二人とともにヘリに向かう渡瀬恒彦。

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そして片桐竜次がヘリに乗ろうとした瞬間に、ヘリは急発進!!

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片桐だけがヘリの足にしがみつき上空へ。

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そこを警察が容赦なく狙撃!!

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我を失った拓ボンは警察に突進し、これまた射殺!!

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「大丈夫か!」と残った渡瀬さんを警察が介抱しようとするも「ションベンさせてくれ」と言って、渡瀬さんはどさくさに紛れて、逃走。

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事件後には乗客が揃っての記者会見です。

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記者の「車内の皆さんの雰囲気はいかがでしたか? お互いが助けあったとか、エゴイズムがむき出しになったとか」の問いにも、不倫していた教師は「エゴイズムなんてとんでもないですよ。バスに乗るときは他人同士でしたがねえ。お互い励まし合い、助け合って・・・」と白々しい回答(笑)。

そして、いつの間にか人質全員解放の英雄扱いされていた渡瀬さん。
「英雄を必死に探しているようですが?」と記者が問いかけると、全員が気まずい沈黙。「皆さん、命の恩人でしょう?」。「そりゃもう、恩人も恩人、大恩人だすわあ」と調子のいい志賀勝。

ここで突然、子どもが口を開きました。「でも、宝石泥棒だろ、あのおじちゃん」。

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記者「宝石泥棒? 宝石泥棒って何のことですか?」
おばちゃん「はは、さあ? 何のことでっしゃろなあ?」
ホステス「ナオちゃん、嘘つきは泥棒の始まりえ~」
全員「そうええ~」

もちろん、全員、渡瀬恒彦が宝石強盗だなんて言えないですよね。宝石をネコババしているのですから。

渡瀬さんのケースの中は空っぽなのでした・・・。
最後に・・・星野じゅんが渡瀬恒彦に呟きます「伸さん(渡瀬恒彦の役名ね)、終わっちゃったね、お祭り。次のお祭り、何やろうか?」と。

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やはり、東映はこうでなくっちゃ!!

映画の醍醐味は、娯楽。祭りですよ、祭りっ。


タイトル『狂った野獣』の「狂った野獣」とは、もちろん川谷拓三や片桐竜次のことではなく、渡瀬恒彦のこともはなく、まあ、乗客のことであるんでしょうけれど・・・、
やはり監督と役者がいい意味で“狂って”くれなければ、おもしろい映画なんて出来っこないですね。最近の映画はすましてばっかで、全然おもしろくない。



おまけ・・・福本清三さん、みっけ!

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