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女経 その1

2012年12月22日 22:02

女経 監督・吉村公三郎、市川崑、増村保造 1960年

『女経』(じょきょう)は、村松梢風原作の同名小説を元にした3人の監督によるオムニバス作品。

「耳を噛みたがる女」は、監督・増村保造、主演・若尾文子
「物を高く売りつける女」は、監督・市川崑、主演・山本富士子
「恋を忘れていた女」は、監督・吉村公三郎、主演・京マチ子

3名の巨匠もさることながら、それぞれの主演には大映の看板女優を起用。3作品ともにオムニバス作品の概念を裏切る、素晴らしい出来映え。
これは、原作をイメージして脚本を担当した八住利雄の手腕に負うところも大きかったのではないでしょうか(原作は原作で面白いです)。


この3作品の中で、京都を舞台にした作品は「恋を忘れていた女」だけですが、せっかくですので他の2作品も紹介しましょう。




耳を噛みたがる女(『女経』より) 監督・増村保造


紀美(若尾文子)は隅田川のだるま船で寝起きする貧しい水上生活者。

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しかし夜は銀座のキャバレーに勤め、客の耳を噛み、男を虜にする。

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そして男からだまし取った金で兜町に通って株を買い貯める、ちゃっかり者。

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そんな紀美が本気で恋をしているのは、会社社長の御曹司・田畑正巳(川口浩)。

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田畑と念願のデートをすることになり、結婚を条件に彼に体を許すが、田畑はその気は一切なく、紀美と寝た翌日には財閥の娘との結婚式が待っていた。

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友人・春本(田宮二郎)との賭に勝って、紀美とただで寝ることに成功した田畑だったが、気持ちは釈然としない。
一方、紀美は田畑の結婚を知って、愕然とする。

田畑は紀美が本当に自分を愛していると知り、「ひょっとすると後にも先にも、あんなに惚れてくれた女はいねえかもしれねえ」と春本に打ち明け、親の言いつけと将来の安定を振り切り、紀美がいる五月(左幸子)の部屋に向かう。

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ふて寝している紀美に結婚を申し込む田畑だったが、紀美は「嬉しいのよ、とっても嬉しいのよ。だけどね、嘘なのよ、夕べ言ったこと。みんな嘘なのよ」と、金を要求する。

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「俺を嫌いなのか?」「しょってるわね。生活力のない気まぐれなお坊ちゃん。今はちょっとハンサムで魅力があるけど、いずれはお爺ちゃん」「お前だって婆さんになるで」「だからお金を貯めてますの」「女一人で暮らせるかい」「余計なお世話よ。ほっといてよ」「君は嘘つきだね」「騙されて悔しい?」「ひでえやつだ」「そうね、きっと育ちが悪いのね」「そうかい」(田畑は金を渡す)「ありがと」(金を数える紀美)

かつて、結婚式の日取りが決まっているにもかかわらず初恋の男に捨てられた紀美は、財閥の娘に同じ思いをさせたくないと、強がったのだった。

キャバレー仲間・五月に紀美は言う。「私はだるま船育ちよ。失恋なんてへっちゃら。風邪引いたようなもんよ。さっ、今夜からまたモリモリ稼ぎます」

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・・・格好いい!





物を高く売りつける女(『女経』より) 監督・市川崑


「流行作家三原靖氏・失踪か」の新聞記事で始まるこの作品。

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湘南の海岸で横たわる三原(船越英二)を見つめる白い顔の不気味な女(山本富士子)。

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その女に興味を持った三原だったが、後日、同じ海岸沿いで手紙を燃やす女を見かける。

女は、亡くなった主人の手紙を燃やしていると言い、主人のものはすべて海に帰すのだと。
三原は女が離れた隙に、手紙の切れ端を拾い、そっと懐に忍び入れた。
三原が心配するのをよそに、女は一人で帰っていく。

また後日、三原が海沿いの住宅街を通っていると、女が玄関先に立っていて、三原を招き入れた。

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風呂をすすめる女に従い、湯船につかっている三原の元に、全裸の女が入ってきて、彼の背中を流す。

女は三原が失踪した作家だということを知っていた。

「こんな家に一人で住んでいてはいけないよ」という三原に、女は「もうすぐお終いになります。この家が売れたら」と意味深なことを言う。

自分の実家も主人の実家も東京にあって、この海沿いの家を売り払われ東京に連れ戻される。三原に家を買ってほしいと女は請う。
三原に心を許した女は、名を爪子だと名乗った。

三原は家を買うための手付け金を持って爪子を訪問するが・・・ここで前半の退屈な場面が一転。爪子の能面チックで感情の乏しい不気味な言動は実は演技だった。

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売買契約書にサインをさせ、体よく三原を追い返した爪子。

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再び、三原が海沿いの家を訪れると「急に東京に連れ戻されることになりました。後の事務は左記のところが代行してくれることになりましたので、よろしくお願いします」の爪子の書き置きが残されているだけ。

ここで場面は、代行先の不動産会社へ。

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爪子は不動産仲買人から、契約によって上前をピンハネするブローカーだった。まんまとボロ屋を流行作家に高値で買わせたと、ホクホク顔。

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自室で着物の手入れをしている爪子に、喫茶店勤めの馴染みの娘がやってきて「私もあなたの商売がしたい」と言う。
山本富士子演じる爪子は「この商売はね、少しばかりかわいいぐらいじゃ、だめ。私くらいに、ずば抜けて美人じゃないと成り立たないんだよ」とほくそ笑む。
「でも、スタイルはいいでしょ?」という娘に、「頭がよくなくちゃ、無理ね。だけど、衣装代はうんとかかるし、気は揉めるし、その割には合わない商売さ」と。

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そんな爪子の部屋に、突然やってきた三原。

「ごめんなさい。あんなつまんない家買わしちゃって」と驚いて謝る爪子に、三原は怒りもしないで「あんな家、もう僕のもんじゃない。海のそばに住みたいという奴がいたから、売ってやった。50万儲けたよ」と。

「僕には裸の君の方が、付き合いいいよ」「あなたは高い買い物をするわよ。あたしの売るものはいつも市価より、少し高いのよ」「何を売るつもり?」「婚姻届。あなたとあたしの」「僕は儲けて売るよ。君と結婚すれば、小説のタネは尽きないし、ノイローゼになって失踪することもないからね」「いつも儲かるとは限らないわよ」「いいよ」

海岸で燃やしていた手紙は、爪子の着物の仕立代、洗い代の請求書で、三原は店をたどってやってきたのだった。

「いつも成功するとは限らないね」「よかったわ、しくじって」

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・・・洒落てる!



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女経 その2

2012年12月22日 22:02

恋を忘れていた女(『女経』より) 監督・吉村公三郎


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お三津(京マチ子)は元は先斗町の売れっ子芸者だったが、今は亡き夫の宿屋・碇家を継いで、修学旅行専門の宿として繁盛させている。さらに木屋町ではバーを開き、先斗町のお茶屋を株式会社にして重役に座るという、界隈では名の知られた、やり手の女。

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お三津のもとに、義妹の弓子(叶順子)が冴えない恋人・吉須(川崎敬三)を連れて東京からやってきた。金の無心に来たのだった。

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その最中、碇家に泊まっていた修学旅行生が宿の前で交通事故に遭い、重体となる。

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お三津は「何でけが人をうちにいれたんや。えらい迷惑やわ。新聞にも碇家の名前をださんといてもらわんと」と不機嫌。「うちに責任のないことで商売の順が狂たら、どうする気え?」と番頭を怒鳴りつける。

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お三津の心配をよそに、修学旅行の一行は、ケガをした生徒と女教師(小野道子)を残して、奈良へと旅立った。

碇家に再度、金の無心に来た弓子に「弓子はん。男ちゅうもんは女を不幸せにするだけのもんどっせ。女は惚れた腫れたで夢中になりますけどな・・・女ちゅうもんは、欲しいもんでも、したいことでも八分に抑えとくことで初めて幸せになれるもんどっせ」と、吉須が弓子を騙していると疑わず、金を貸すことを断る。

「それは芸者の人生観ね。つまりは打算という事じゃない」と弓子も強く言い返す。「私はね、前々からあなたが死んだ兄さんを本当に愛していたとは思えなかったわ。碇家の財産を狙ってあなた・・・だったらあなた・・・この碇家へ泥棒に入ったのと同じことだわ」

「弓子はん、うちは碇家の財産を倍にも増やしましたえ」
「そりゃ、そうかもしれないけど・・・いつでもお金の多い方へ転ぶというのは芸者の考え方でしょ。でも私は違うの。私はね、騙されてもいいの。後悔はしないは、愛しているから・・・。でも、お三津さん、お金の勘定ばかりしていて、あなた今まで本当に幸せだと思ったことがあって? あったはずがないし、これからもないわ。だってあなた、お気の毒だけど、もう、あんまり若くないのよ」

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〈30代半ばの京マチ子も、若い叶順子にここまで言われては、ぐうの音も出ません・・・〉

そこに助け船のように、電話が・・・。昔の男・兼光(根上淳)からの久しぶりの電話だった。

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木屋町のバーで待っているという兼光の電話を無言で切るお三津。


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〈生徒を看病する小野道子演じる女教師〉

生徒の家は貧乏で、伊勢湾台風で家も流され、修学旅行はおじさんからお金を借りてやってきたのだった。


お三津は隠居している義父(二代目中村鴈治郎)の機嫌をとるため、岡崎の家にいた。
「なあ、お三津・・・どや、今晩一緒にねよか」と誘う義父。
「やめておくれやす。しょうもない」と断るお三津だが、夫が亡くなり碇家を追い出されることを恐れたお三津は義父と関係を持つことで女将の座を得たのだった。

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迫る義父を「あきまへん!」と断り、やってきたのは、お三津が営む木屋町のバー。

そこに待っていたのは兼光で、「本当に好きやったのは、あんさんでした」と懐かしさのあまり、焼けぼっくいに火がつくが・・・警察が乱入。

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兼光は詐欺の容疑で手配されていたのだった。

気を落とすお三津に碇家から電話が。生徒の体調が急変した。
急いで帰ってきたお三津は、生徒の貧しい生い立ちに同情し、「先生、ご心配はどうぞご無用に。碇家で出来るだけのことはさせていただきますさかい」と。輸血が必要な生徒のためにお三津は自分の血を提供する。

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暁どき、生徒の体調が回復したことを聞き、お三津は安堵する。
「甲斐がおしたなあ、女将さん。ほんまにようしておあげなした」とねぎらうお手伝いに、「初めて人のためにな。自分のことしか考えてこなんだうちやけど・・・」とお三津は生徒の様子を見にいく。生徒はお三津を見てほほえみ、お三津はうなずく。

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弓子が恋人の吉須を伴ってやってきた。朝一番の汽車で東京に帰るという。「ねえ、お姉さん。私たちを信じてください」と言う弓子に、お三津は金を差し出した。

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「なあ、弓子はん。あんさんらにあやかって、うちももういっぺんさがしてみよう思う。女のほんまの幸せっちゅうもんを・・・もう手遅れかもしれまへんけど」と照れるお三津。

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3作品の中ではすこしテーマの重い「恋を忘れていた女」でしたが、朝の澄んだ三条大橋にたたずむ京マチ子の姿に、やけにすがすがしさの残る名作の匂いが漂っているのでした。

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