--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

呪いの壺

2010年09月29日 23:39

怪奇大作戦 第23話「呪いの壺」 1969年

呪いの壺000004


今回と次回はお待ちかね、怪奇大作戦“京都シリーズ”(実相寺昭雄監督)の紹介です!


そもそも、「怪奇大作戦」は、「ウルトラ」シリーズで知られる円谷プロが、「ウルトラセブン」の後番組として1968年9月から半年にわたり放送した空想科学特撮ドラマ(全26話、TBS系列で日曜午後7時からの30分番組)で、
科学捜査研究所(SRI)のメンバーが、警察でも手に負えない数々の猟奇犯罪や科学犯罪の謎を追うというストーリー。
人間の闇や高度経済成長期の社会の歪みに焦点を当てた意欲作と見て取ることも出来ます(荒唐無稽とは言わないでください・・・)。

SRIのメンバーは微妙に地味です(笑)。でも地味だからこそ、この世界観が表現できうるんですっ!
防衛大出身の肉体派にして行動派・三沢京助には、勝呂誉。
SRIのエースでいつも冷静沈着な理論派・牧史郎に、岸田森。
元警視庁鑑識課長にしてSRIの設立者でもある所長・的矢忠に、原保美。
若手で少しおっちょこちょいな野村洋に、松山省二(のちの松山政路)。
紅一点で学校を出たばかりの秘書・小川さおりに、小橋玲子。
そして、SRIと警察との橋渡し役、警視庁捜査第一課長の町田警部に、小林昭二。



さて、「呪いの壺」です。

京都で奇怪な事件が発生した。壺を鑑賞中の老人5名が、時と場所を異にして次々と怪死を遂げたのだ。
すべての被害者の神経腺は赤く変色し、特に視神経は完全に破壊されていた。

呪いの壺000000
〈視神経が破壊される瞬間!です〉

警察の要請で、京都に急行したSRIの一行は、投宿先の旅館前で肺を病む日野統三(花ノ本寿)という青年に声を掛けられる。

呪いの壺000002 
〈日野統三役の花ノ本寿。この回ではSRIから主役を奪うほどの存在感を発揮します〉

被害者たちは全員、統三の勤める古物商・市井商会の得意先であった。「気にかかって仕方がない」とSRIを訪ねてきたのだ。
翌日、市井商会を訪問したSRIメンバーの目に、統三と主人・市井(北村英三)との確執が映る。
SRIが訪問している最中にも、得意先の老人が亡くなったことが市井の娘・信子(松川純子)から知らされる。
統三は実家に少し帰ってくると市井に告げる。
「こんな忙しい時に」「忙しいのは事件の方で商売には関係ないでっしゃろ」と言うと、市井の了承も聞かぬまま自室に籠もる。
信子は父親と統三の不仲、そして今回の事件が気がかりで、統三を問い詰める。信子と統三は恋仲にあった。

呪いの壺000010 〈西本願寺門前を歩く統三〉

「いっしょにおいで、それがええ、それがいちばんええことや」と、統三は意味ありげに言い、信子を伴い汽車で帰郷する。SRIに尾行されていることを承知で。

呪いの壺000021
〈統三と信子を尾行するSRIの三沢と野村。もはや尾行ではなく同行の距離です・・・〉

統三の実家では、父親(浮田左武郎)が出迎え、信子がついてきたことに驚く。
日野家は祖父の代から、市井家のために唐や宋時代の贋壺を作らされていたのだった。
腕のいい陶芸家である父が贋作を作られていることに我慢のならない統三。
会心作が出来上がっても、父親の名とは関係なく金持ちに買われ飾られることが口惜しいのだ。
しかし、市井家への義理から父はやめようとはしない。

信子とふたりきりになった統三は真意を語る。
「それというのもあんたと一緒になって、贋物をどんどんはびこらすんや。成金どもを心の底から嗤うてやりたかったからや!」

呪いの壺000027

しかし、統三の思惑とは裏腹に、贋物はいつまで経ってもばれず、むしろ珍しい真作として保証され出す始末。
肺を病み、余命幾ばくもない統三は、そんな家や父親の理不尽さから、市井家に復讐する決意をすでにしていたのだ。
市井商会から壺を買った金持ちが死に、まもなく市井家もつぶれる。統三の陶酔の瞬間が迫っていた。

信子が見守る中、統三は山中で土を掘っている。その姿をSRIの三沢と野村が不審そうに眺める。

呪いの壺000031
〈三沢と野村も、見つかろうが見つかるまいが、もうどうでもよくなっているようです・・・。しかし彼らの能力を疑ってはいけません〉

統三が掘っていた砂、それこそが、老人たちの死の原因“リュート物質”だったのだ。
“リュート物質”とは、太陽光に刺激されるとリュート線を放出し、真っ先に目をやられてしまうという恐ろしい物質だ。

京都に帰り、市井に贋作を白状させたSRIが次に向かったのは統三の元。
蔵に潜む統三を見つけるが、“リュート物質”を手に、統三は逃げる。「これで僕も犬死にしないですむ」と。

呪いの壺000044

長唄の聞こえる町なかを走り、統三の逃げ込んだ先は、古寺。
「これでええんや、これで思い通り・・・。この寺は、本物か、贋物か・・・、ワシの道連れやで!」

呪いの壺000053
〈もはやセリフが理解不能です・・・〉

そう叫ぶと、統三は大きく咳き込む。すると“リュート物質”の黒い粒子が舞い上がり、堂宇を覆い、古寺の伽藍は一瞬にして業火に包まれた。

呪いの壺000071

呪いの壺000067 
〈実在の門と焼け落ちるミニチュアの伽藍の合成、さすがです〉

統三が“リュート物質”を掘り出していたのは、旧陸軍の秘密研究所があったところ。「戦争のたびに科学が進歩する、か」所長の的矢が呟く。
統三の父は自ら作った壺をたたき割る。「ちくしょー、ちくしょー」と叫びながら。

呪いの壺000081




まだ、TBS社員だった頃の実相寺昭雄が監督をつとめています。脚本は石堂淑朗。
そもそも、これだけの内容を30分(実質20数分でしょう)に詰め込むのですから、話の展開には無理があります(笑)。
ある程度の、いや、かなりの思考の飛躍はこの際問わないこととしましょう。

もちろん“リュート物質”とはなんぞや!なんて考えてはいけません。ググってもいけません。
なぜなら、「リュート物質」と「怪奇大作戦」の無限ループに陥るだけだからです(笑)。


誰もが納得する、この作品の圧巻は最後の寺の焼失シーンでしょう!

呪いの壺000058

美術担当・池谷仙克氏のこだわりが結実したシーンだったようです。
1/6縮尺のミニチュアをつくり、ガソリンを仕込み、3台のカメラによる撮影だそうですが、瓦の落ち方、炎の走り方、屋根の崩れ方、すべてがリアルすぎますっ!
ウルトラマンやセブンのミニチュアは1/20か、大きくても1/10だったとか。火や水は小さくならないので大きく作ろうと、当初は1/4で計画されていたが、予算の都合で1/6になったとか。
モデルは上京区寺之内にある日蓮宗本山・妙顯寺。あまりのリアルさに、放映当時、自分のお寺が燃えていると檀家が慌てたといい、
また、お寺を燃やすとは何事かと、テレビ局に苦情の電話が鳴ったとも・・・。



スポンサーサイト

京都買います

2010年09月30日 00:40

怪奇大作戦 第25話「京都買います」 1969年

京都買います000000


なにがって、もう、タイトルにやられちゃいます! 「京都買います」ですよっ、「京都買います」!
「呪いの壺」に引き続き監督は実相寺昭雄。脚本は佐々木守。とにかく岸田森の演技と存在感に注目です。



京都で仏像が忽然と消失する怪事件が発生していた。
しかも消失した仏像はどれも考古学の権威・藤森教授(岩田直二)が研究していたものばかりだった。SRIの牧史郎(岸田森)は教授の研究室を訪ねる。

京都買います000002

しかし、重大事件であるにもかかわらず、教授から出てきた言葉は「ざんねやと思う一方、ほっとしております」という意外なものであった。
仏像が安心して住める町でなくなりつつある京都の変わり様を嘆いているのだ。
いつも怜悧な牧であったが、研究室助手の須藤美弥子(斎藤チヤ子)を見て、心惹かれるものがあった。

京都買います000008

美弥子はかいがいしく、愛おしむように仏像に接していた。


SRIの助手・小川さおり(小橋玲子)にゴーゴー喫茶へと連れてこられた牧。
「踊ろう」というさおりをよそに、騒々しさに耐えきれず外に出ようとする。その時、美弥子の姿を見かけた。

京都買います000013

美弥子は踊る若者たちに「ねえ、あなた、京都の町を売らない?」と尋ねているのだった。
若者たちは深く考えず、美弥子の差し出す“契約書”にサインする。
その紙には「京都市民として、京都に現存する歴史的文化財に関する一切の権利を譲渡すことを約束します」と記してあった。
美弥子に詰め寄る牧。「誰も京都なんか愛してないって証拠です」そう言って雲水の列をかき分け消えていく。

京都買います000019


美弥子を探し出した牧に、
「買ってしまいたいんです。仏像の美しさのわからない人たちから、京の都を・・・。仏像のよさのわかる人たちだけの都をつくりたい」そう語る美弥子。
その意図を理解できない牧に、さらに語る。「仏像は私だけのもの、そう思いたいからです」と。

京都買います000024

見晴らしのいい山門で、牧は精一杯の言葉を発する。
「僕は仏像より、現実に生きた人間の方が好きかもしれない・・・」もちろん、それは美弥子のことであった。
文の助茶屋で、「たまにはこんなところに来るのもいいものでしょう?」と問う牧に、「生きている男の方とお話しするのも悪くない・・・今はそう思ってますわ」と答える美弥子。ふたりのつかの間の休息であった。

京都買います000028


また消失事件が発生した。
現場に来た牧に、雲水の鳴らす錫杖の音が聞こえる。自然と美弥子のことを思い出す。
現場に不審な器具が見つかった。物質を電送するという“カドミウム光線”と関係があるかもしれない・・・。
牧にはなんとなく美弥子の仕業だと言うことがわかっていた。

「昨日の夜、また一つ仏像が消えた。あれはどういう訳なんです?」

京都買います000034

美弥子は「知りません・・・何も・・・さようなら」と走って逃げるが、牧につかまり見つめられると、とうとう白状してしまう。
「許してください、私は仏像を愛してしまった女なんです」そう言い残し、歩き去る。牧ももう追いかけようとはしない。

SRIがくつろぐ旅館の一室。牧以外のメンバーには、まだ美弥子が犯人だという確証はない。
一方、カドミウム光線は物質をその構成分子に分解し、電送するものであるということがわかる。

美弥子を尾行し続けていた牧は、法性寺で美弥子が装置をつけるところを目撃する。柱には例のカドミウム光線を出す発信器があった。


ある寺の一室で、読経が鳴り響く中、藤森教授と、美弥子、そして僧の集団がいる。
消失したはずの仏像たちが並べられ、仏像の前には、京都市民が署名した契約書の山があった。

京都買います000041

「いくら冗談やゆうても、こんだけ仰山の人たちがこの町のもつ文化に関心がない」無念そうな藤森教授。
「先生作りましょう。一日も早く、この仏像たちの町を・・・」美弥子の目には涙が光る。

そこへ、ついに受信地を突き止めた、警察とSRIの一団が立ち入る。
国宝消失事件の犯人として藤森教授は、なすすべなく連行される。
「牧さん、あなた・・・」集団の後ろに隠れるように立っていた牧を認めた美弥子。その視線が牧にはつらい。

京都買います000046

牧に追い打ちをかけるように美弥子は呟く。
「仏像以外のものを信じようとした・・・私が間違ってた・・・それだけのことです」
暗闇へと美弥子は姿を消す。


京の町、京の寺を彷徨う牧。美弥子の面影をさがすように。

京都買います000057

人のいないある古びた寺で、地面を掃く尼僧に声を掛ける。
振り向くと、それは美弥子だった。

京都買います000073

「美弥子さん・・・」
「須藤美弥子は一生仏像とともに暮らすとお伝えしてくれとのことでした・・・」
うなだれる牧。
「きっとそのほうがお幸せだと思います。どうぞあなた様も、お忘れになってくださいませ」
諦めて帰ろうとする牧が振り返ると、美弥子は仏像になっていた・・・。

京都買います000080

震える牧は、コートを頭から被り、その場から走り去った。



もう、上質の散文詩を映像で見ているようです・・・。
そして岸田森の演技は神経質そうで、それでいてナイーブで・・・、個性派俳優と呼ばれるに相応しい真骨頂ですっ!!
もちろん、“カドミウム光線”もすんなりと受け入れられましたね(笑)。

でもね、最後のシーン、仏像に箒を持たせるって、一体・・・?
まあ、牧さんにはそう見えちゃったんだから仕方ないか(笑)。



岸田森はもともと文学座の出身。創設者の一人でもある岸田國士の甥という関係もあったのでしょう。
それまで舞台を主戦場としていた彼が、テレビへと本格的に進出したのは、「氷点」(1966年)での辻口徹役。たいへんな高視聴率ドラマで、この時、世間には役者として認知されたようです。

そしてこの「怪奇大作戦」(1968年)で、役者人生に大きな影響を与える円谷プロと出会うのです。よほど肌に合っていたのでしょう。
新劇出身にもかかわらず、この作品以降、自ら「僕は円谷育ち」と公言するくらいなのですから。
惜しむらくは、1982年に43歳の若さでなくなってしまったこと。演出家としての才能をも秘めていただけに、今のつまらないドラマ界をどう思っているのでしょう。


同じく「円谷プロはわたしの故山」と語る実相寺昭雄監督。監督として、ウルトラマン作品からATG作品へと移り変わる際の、“紀元零年”的な作品が「呪いの壺」と「京都買います」ではなかったでしょうか。
「京都買います」では、主な寺院ロケを金戒光明寺で行っていますが、それでも、広隆寺、仁和寺、平等院、東福寺、知恩院、銀閣寺、化野念仏寺、万福寺、光悦寺、源光庵、二尊院、祗王寺、常寂光寺・・・と30分番組には贅沢なほど京都の寺社でロケを行っています。
並の作品なら、むしろその行動範囲が違和感となってしまうのですが、そんな違和感をも凌駕する圧倒的な叙情的芸術作品にしてしまいました。


こうしてみると円谷プロの功績は偉大ですね。
特撮があたかも、子ども向けだけのものと思っている人がいるとしたら、人生をいくらか損をしています。


現在、「怪奇大作戦」はデジタルウルトラシリーズ(全6巻)としてDVDで見ることができます(ただし、第24話の「狂鬼人間」は未収録です。大人の事情・・・差別用語の為でしょうか・・・)。

怪奇大作戦DVD_20100929162609
〈「呪いの壺」と「京都買います」はVo6に収録〉



無常 その1

2011年10月03日 01:27

無常 監督・実相寺昭雄 1970年 ATG


1960年代半ばよりTBS映画部の社員として円谷プロの「ウルトラシリーズ」に携わり、そのエキセントリックな演出手法で一目置かれていた実相寺昭雄。
「ウルトラシリーズ」の後、特撮テレビドラマ『怪奇大作戦』(1968年~1969年、円谷プロ制作)の「呪いの壺」(第23話)や「京都買います」(第25話)などを監督。日本の因習にスポットを当てたり、奇抜なカメラアングルを多用したり、叙情的な登場人物の描写に徹したり・・・と、日曜夜7時というお茶の間のゴールデンタイムに似つかわしくない実験的な演出手法はまたしても健在で、同年、大島渚脚本による中編映画『宵闇せまれば』を自主制作し、映画監督としてデビューします。

そして1970年には、10年ほどつとめたTBSを退社し、映像制作会社「コダイ・グループ」を設立。ATGと提携し、長編映画第一弾となる『無常』を制作したのでした。

WS000103.jpg
〈『無常』で主役・日野正夫を演じたのは、田村亮〉

実相寺監督はその後もATGで立てつづけに、『曼陀羅』(1971年)、『哥(うた)』(1972年)、『あさき夢みし』(1974年)と計4本の映画を撮るのですが、石堂淑朗が脚本を担当した『無常』、『曼陀羅』、『哥』は、実相寺監督のATG三部作と称され、なかでも長編デビューとなった『無常』は、(観念的なテーマやタブーの連続に)作品の好き嫌いは観る人によって大きく別れるところでしょうが・・・日本映画史における最高傑作の一つに数えて、問題ないでしょう(個人的には『曼陀羅』が好きですが)。

WS000232.jpg

ちなみに『無常』は、1970年のロカルノ国際映画祭グランプリを獲得し、1970年度キネマ旬報日本映画ベストテン第4位でした。


内容は、姉と弟の近親相姦、師匠の妻と弟子との交情、義母と息子の痴情・・・と、人間不信に陥るくらいにドロドロです(苦笑)。

WS000124.jpg
〈姉の百合を演じた、司美智子〉

しかし、そのあらすじを納得させるだけの脚本、配役、役者の演技、一コマ一コマを精緻に計算し尽くしたかのようなカメラワーク・・・、何をとっても非の打ち所がありません。
クライマックスとなる、愛欲に溺れる主人公と、その姿が許せない僧侶との「極楽地獄問答」のシーンは観念的すぎるやりとりに、ややもすると観客がついていけず、白々しくなる恐れもあったのでしょうが・・・主人公・日野正夫を演じる田村亮の迫力あるセリフまわしと、やり込められ次第に恐怖に顔が引きつっていく僧侶・荻野(岡村春彦)の表情が、実に圧巻。さらに奇抜なカメラアングルを多用し、観るものを画面に引き込ませる力は“実相寺マジック”以外の何ものでもありません。

WS000530.jpg
〈田村正和の弟としての印象が強い田村亮ですが、実相寺作品では(『哥』における冴えない青年役も含め)素晴らしい存在感です〉

さらに、低予算のATGのこと。恐らく制作費を切り詰めるためのモノクロ撮影だったのでしょうが、これも陰鬱な世界観には見事にあっていました。

WS000115.jpg

上映時間143分という長さもさることながら、一筋縄ではいかない“観念的”で難しい作品ですので、今回も毎度のことながらあらすじを紹介してお茶を濁すことにします(苦笑)。
それにしても、これほどの作品が、今では手頃に見ることができないのは残念ですね・・・。

ちなみに、『無常』での主人公の役名“日野”や、『曼陀羅』に出演している岸田森の役名が“真木”なのは、『怪奇大作戦』(岸田森が演じるのはSRIのメンバー“牧”でしたが)を否が応でも想起させます。
さらに仏像、ユートピアの建設など『怪奇大作戦』で扱ったモチーフから大幅に発展させ、政治、宗教、日本の家制度・・・をテーマにした壮大な意欲作が1970年代初頭に早くもつくられていたことにも驚きです(むしろ、この時代だったからこそ、つくることができたとも言えるのですが)。



無常 その2

2011年10月03日 01:27

WS000092.jpg


白壁の町並みが残る琵琶湖近くの旧家。そこの長男・日野正夫(田村亮)は仏像の魅力に取りつかれ、家の近くの城跡を巡ってはスケッチブック片手に仏像を描いたり、石仏を彫ったりしていた。

父親の亨吉(山村弘三)は大阪で家業「日野商会」を営み、ゆくゆくは正夫に跡を継がせたいと考えているが、21歳になった正夫は大学にも進まず、家業を継ぐ気もなく、家を出たいと考えていた。

WS000126.jpg
〈映画の中では、琵琶湖近くの「クサカベ」という匿名の地名で描かれている正夫の実家がある町ですが、ロケが行われたのは、安土。安土城跡とその城郭内に建てられた見寺(総見寺)が正夫の家のすぐそばの「城跡」として登場します〉

WS000122.jpg

弟想いで25歳の真面目な姉・百合(司美智子)。父親は大阪から帰ってくるたびに百合に見合い話を持ちかけるが、彼女は一向に乗り気ではない。「姉ちゃんが、嫁にいかんと養子でももろてくれたら俺は堂々と家を出て行ける」と城跡の高台で正夫は姉に告げる。

WS000127.jpg
〈正夫が家業に魅力を感じず跡を継ぐ気がないことを父親に告げた。厳格な父親は正夫に手を挙げ、鬱屈した空気が漂う。母親の種を演じるのは、テレビドラマでお馴染みの、河東けい〉


美しい百合には、日野家の書生・岩下(花ノ本寿)や、城跡の寺の副住職・荻野(岡村春彦)が思いを寄せていた。

WS000151.jpg


ある日、知人の結婚式で両親が東京に行き、書生の岩下も骨休めに実家に帰って、二、三日の間、広い屋敷では正夫と百合のふたりきりに。

両親が東京に発った日、正夫は石仏の写真集を買いに京都へ。駅で偶然会ったのは荻野。「おかしなもんやなあ・・・寺に生まれた俺が坊主が嫌で、実業家の家のキミが仏に関心がある」「交代しますか?」「そうもいかんやろ」。

WS000160.jpg
〈この作品には新幹線がたびたび登場しますが、その通るタイミングも計算し尽くされています〉

荻野は京都の仏師に頼んでいた観音像が七分通り完成し、その前金を支払いに京都へ行くという。そして仏像に関心を持つ正夫は荻野について行くことに・・・。

WS000170.jpg


仏師の名は森康高(岡田英次)。森の妻は若い後妻の令子(田中三津子)。お茶を差し出す令子の正夫を見る目が潤む。

WS000195.jpg

正夫は初対面の森に信心を問う。森は正夫の無礼な質問に怒りもせず答える。「いったん私の手を離れてから、何十年、何百年の間、どれだけの人間がどんな願い事を持って拝むかもしれん・・・そう思って彫るだけですわ。しかしそう思うせいか、一つ出来上がるごとに何かこう、命を少しずつ吸い取られてしまうような感じやな。信心のない人間がたとえばご詠歌を歌うとロクでもない死に方しかせんそうやが、私の仕事もそんなもんと違うやろか・・・」と。

WS000210.jpg

森には大学生の一人息子・康弘(佐々木功)がいるが、彼には父親の跡を継ぐ気はなく、森もすでに諦めていた。

WS000258.jpg
〈正夫が仏師の家からの帰り道で女を買い、ひとりホテルを出た時に女の夫であるヤクザ者(寺田農)が言いがかりをつけてきます。が、実相寺作品常連の寺田農は正夫にあっけなく張り倒されるチョイ役だったのでした(苦笑)〉



無常 その3

2011年10月03日 01:28

WS000323.jpg

雨の日、姉弟二人きりの屋敷で、能面を見つけてきた百合。能面をつけた二人は酔狂で戯れたあげく、正夫が百合に襲いかかり、越えてはならない一線を越えてしまう。「怖い、恐ろしいことや・・・」と訴える姉に、「何も恐ろしいことあらへん。自然なんや。二人こうなんのが一番自然なことや」と理由にならない理由で納得させる弟・・・。

WS000361.jpg

母親が東京から帰ってきて、城跡に正夫を呼びに行く百合。そこでまたしても二人は抱擁し、知らないうちにその姿を僧侶の荻野に見られてしまう。

WS000406.jpg

百合に思いを寄せていた荻野は、やるせない想いを寺の観音菩薩を撫でまわすことで慰めた。

WS000428.jpg


百合が正夫の子を宿した。正夫は姉と書生の岩下を一緒にすることで、子を産ませようとする。「あんた、うちがあの人に抱かれてもええのんか?」「姉ちゃん、俺たちの間はそんなもんやない。血で繋がっとるねん。姉ちゃんが岩下に抱かれようが、何されようが、その事実は消えはせん。そやろ?」と。

WS000541.jpg
〈書生・岩下は、実相寺作品の常連である花ノ本寿が演じています。しかし実相寺監督・・・このアングルがホント好きですね(笑)〉

百合と岩下の結婚を画策すると同時に、正夫は荻野に仏師・森への紹介状を書いてもらい、弟子入りすることを決意していた。
正夫の申し出に、荻野は姉弟二人の関係を知っていることを彼に伝え「畜生にも劣るわ」と吐き捨てる。「そやから家を出よういうねん。あなたには関係ないことや。紹介状どないなもんやろ?」「書く。書こう。そやけど、君は二度と家に帰えらんほうがええ」と荻野は忠告した。


正夫の計画通りに、百合と岩下は結婚し、正夫は仏師・森の元に弟子入り。
その10ヶ月後、、実家では百合が男の子を出産し、岩下と仲のよい夫婦を演じていた。

WS000623.jpg

正夫の両親も跡取りとなる男の子の誕生に上機嫌だった。しかし、久しぶりに実家に帰った正夫と百合は城跡でお互いの情愛を確認し、二人を探しに城跡に上ってきた岩下は姉弟の関係と子どもの出生の秘密を知り、ショックのあまり新幹線に飛び込み自殺をしてしまう。

WS000688.jpg
〈真実を知りショックのあまりうなだれる岩下と、城跡で正夫と百合が情交を重ねていることを知りながらも、岩下が上ることを止めようとしなかった僧侶の荻原〉


WS000582.jpg

京都での仏師修業も板についてきた正夫だったが、今度は師匠の後妻・令子(田中三津子)と関係を持つようになっていた。師匠の森は男としての能力をすでに欠いていて、令子は性欲のはけ口を正夫に求め、さらに森は正夫と妻との情事を盗み見ることで、仏像彫刻に打ち込む精気を得ていた。それを知っての正夫の行動でもあり、ついには三人一緒に床を列べて寝る関係に・・・。
「私は先生のお力になりたいのです。私は令子さんを間に先生と交わりたく思います・・・女なんか何でもありません。女は好奇心の動物です。すぐ馴れ、歓び、三人でなければ満足しなくなりましょう。先生の奥さんにふさわしい女やと思います」。

WS000738.jpg
〈正夫の言葉に満足げな表情を浮かべ、仏像彫刻に取りかかる森(岡田英次)〉

しかし、そんな父・義母・正夫との異常な三角関係を知った森の一人息子・康弘(佐々木功)が荻野の元に相談に行き、愛欲に溺れた正夫の正体を知らされる。そして荻原は京都での正夫の振る舞いに憤りを覚えていた。

WS000756.jpg
〈「観音さんもおかしな人間の手で作られてはりますわ・・・薄気味悪い」と康弘は荻原にこぼす〉





Twitterボタン

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。